小説 | ナノ
場所とか気にしないからね




他の百合話とは特に繋がっていません。






夏の体育の授業と言えばプールらしい。暑い教室で年老いた教師の話を聞かされるよりは、炎天下だろうが水の中にいる方が楽しいそうだ。あたしは騒がしのが嫌いだから、どっちも気に食わない。

「信じらんない。一回でも出なきゃ夏休み来させるとか横暴だ。職権乱用だ」
「……手前は休みすぎなんだよ」

女子特有の甲高い声が溢れ返る更衣室。その声に服も脱がないうちにイライラしたが、すかさず臨美にとめられる。
いつもプールの時間になると保健室へ逃げるくせに、今日は教師に言われしぶしぶ参加していた。

「好き勝手に泳ぐだけなのに、サボっても同じじゃない。偉いよねシズちゃん、毎回ちゃんと参加して」
「……」

参加してもちゃんと泳いでいるかは別問題だ。だいたい入る前に浴びるシャワーをすれば、あとは日陰で見ているだけ。教師は目も合わせようとしないし、これで点数がもらえるなら別にいい。

「今年は泳ぐつもりなかったから、水着なんか買ってないのに」

そう言って臨美が袋から出したのは紺色の、どこか懐かしさを感じるスクール水着だった。
胸の部分に付いたゼッケンには手書きで『折原』の文字。

「……手前、それ着れんのかよ」

スクール水着と言うのは高校生が着る代物ではないと思う。ふと以前、臨美に無理矢理見せられたコスプレAVを思い出した。臨美が着たら色々な意味で危ない気がする。

「うーん……最後に着たのは三年前かな?大丈夫だよ昨日家で着れたから」
「……それって三年前から何も成長してないって意味だろ」
「黙れ、背はちゃんと伸びてるんだから」

あたしは臨美と中学が違うから知らないが、新羅曰く『驚くほど胸の成長は一切なかった』そうだ。

陽に焼けていない真っ白な肌。あたしもどちらかと言えば色白な方だが、臨美は顔もあってか更に際立っていた。
これで男の一人もいないだなんて信じられない。実際校内には臨美を変な見る奴が多い。

「というかシズちゃんは成長し過ぎなんだよ。何食べたらこんなでかくなんの」
「ひゃっ!」

後ろからいきなり胸を鷲掴まれた。勢いよく腕を振り上げるが、当たる寸前に避けられる。臨美は運動神経ばかりは良かった。

「両手で掴めないとか腹立つ」
「手前のは十分だよな」

臨美の背後に回り込んでブラの上から胸を触る。見栄を張ってワンサイズ上のブラを着けているんだろう。布が余っていた。

「ひゃっ……シズちゃん、そんな、とこっ」
「手前からやったんだろ!」
「や、あぁ……そんな、触んないで」
「はぁ?人のはあんな掴んどいてそれはないだろう」
「も、やめ……」

「ねぇ二人とも」
「あ?」

背後から新羅に肩を叩かれた。振り返れば顔をうっすらと赤くして視線を合わせようとしない。

「いちゃつくならさ、他でやってよ」

そう言われて気付いた。
いつの間にか周りの騒がしさはなくなり、皆下を向きながら急いで着替えていた。

「いや、別にそんなんじゃ……」
「もうシズちゃん、そういうのはベッドの上だけにしてよね。あ、ソファの上でもいいけど!」
「はぁ!?手前何言って……!!」

その言葉に周りは肩をびくつかせて慌てて更衣室から出ていってしまった。新羅もため息を吐きながら先に行ってしまう。
あれだけいた更衣室には、あたしと臨美の二人だけ残った。

「シズちゃん」

呼ばれて振り返れば水着に着替えている臨美。正面から抱き締められて、人が居ないことを良いことにキスまでしてきた。

「今日の夜はスク水の格好でしてあげようか?」

頭をよしよしと言いながら撫でられる。馬鹿にするなと言う気も起きなかった。
明日から授業のプリント、みんな回してくれるだろうか。それだけが心配だった。










(……脱がすの面倒だから着なくてもいい)
(……聞いてたんだ。シズちゃんのえっち)
(うるさい)
















どれだけ私は臨美をぺちゃんこにしたいんだ。


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