小説 | ナノ
つがサイ+シズイザ



俺が臨也さんを苦手なように、サイケは静雄さんが苦手らしい。理由はよく分からないが、こうして目の前にすると俺の後ろに隠れてしまう。

「嫌われてるねぇシズちゃん」
「うるせぇよ」
「っ!!」

サイケは今にも泣きそうな顔をしながら俺の袖を引っ張ってくる。最初は可愛いからと黙って見ていたが、いい加減可哀想に思えてきた。

「おいで、サイケ」
「うぅっつがるぅ」

腕を広げてやるとすぐに抱き着いてきた。あやすように背中を撫でてやりながらソファに座る。前のソファに座る静雄さんは来てから5本目の煙草に火をつけた。

「サイケは見てて和むなぁ」

臨也さんはそんな静雄さんの隣でニヤニヤしながらサイケを見ている。どうしてサイケがこの人を慕っているのか理解できない。

「……似た顔でんなくっつくんじゃねぇよ」
「八つ当たりなんて大人げないよ、シズちゃん」

サイケはビクビクしながら、静雄さんを見ていた。目が合うとすぐに俺にしがみついてくる。

「サイケ、何で静雄さんが怖いんだ?」

頭を撫でながら問うとサイケはビクビクしながら静雄さんを指差した。

「だって……シズちゃんはおおかみだから、たべられちゃうっていざやくんが……」
「「……はぁ?」」

俺と静雄さんの声が重なる。二人して臨也さんの方を見ると、顔を背けられた。

「いざやくんがまえにたべられたって。すっごくいたくてね、ないちゃったって……」

静雄さんは逃げようとした臨也さんの腕を満面の笑みで掴んだ。俺もサイケの手を掴んで玄関の方へ向かった。

「とりあえずお邪魔しました」
「おぉ、気を付けて帰れよ」
「ちょ、ちょっと待ってまだ帰らなくてもいいんじゃない?ご飯食べてくって言ったじゃん!」
「サイケ、さよならして」
「ばいばいいざやくん……シズちゃん」
「おう」

サイケはよっぽど帰りたかったのか俺よりも先に玄関へ走って行った。

「嫌だよ待っ……ちょ、ちょっとシズちゃんチャック下ろしながら近付いて来ないでぇぇぇ!」

俺もリビングの扉をしっかり閉めて、サイケの後へ続いた。ついでに簡単に扉が開かないように玄関にあった棚を前に移動させておく。臨也さんが逃げようとしても、出れないように。
別にサイケになつかれているのが、気に入らないからしたわけじゃない。





「ねぇつがる」
「ん?」

静かな道を二人手を繋いで歩く。もう夜で暗いからか、それともさっきのを見てか、サイケは手を強く握ってくる。

「いざやくん、シズちゃんにたべられたの?」

不安げな目で見つめられる。
そんなサイケが可愛くてつい、悪ふざけしたくなった。

「……なぁサイケ」
「なぁに?つがる」
「俺も狼で、サイケのこと食べたいって言ったらどうする」
「え……?」ビクリとサイケの肩が震えた。繋いでいた手がゆっくりと離される。サイケはびっくりした顔をしながら俺を見たまま動かない。

「つがるもおれのこと、たべたいの……?」
「……だめか?」

いつになく小さな声で呟いくとサイケは首を傾げた。怖がるサイケは可愛いが、これ以上続けると拗ねて口を聞いてくれなくなる。嘘だからと言おうとすると、サイケはいきなり俺に抱き着いてきた。腕を背中に回されて、痛いくらい顔を胸に押し付けられる。
涙を浮かべながら上目遣いをしてくるサイケは、コートのボタンを一つ外した。いつも見ないようにしている白い肌が、街灯に照らされてはっきり見える。一気に体温が上がった気がした。

「……おれ、つがるになら……たべられてもいいよ?」
「……っ」


食べてと服を脱ぎ始めたサイケを思い止まらせるのに20分。自分の理性を総動員させて家に帰るまで一時間以上かかった。









むっつり津軽さん。
もちろんサイケはバリバリ食べられる為に脱いだんですよ。

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