小説 | ナノ
3




「シズちゃん、それ……何?」

臨也の目が覚めて第一声はそれだった。何も着ていない下半身を隠すように自分のコートを羽織る。一応後処理だけはしておいた。中に入れたままにして、腹を壊されたりしたらできなくなるからだ。
臨也の指差す先にはとても普通の店では買えないようなもの、大人の玩具というものが段ボールいっぱいに入っていた。
これは以前借金を取り立てた男の家にあったものだ。男はずいぶんなシュミをしていたらしく、部屋にはこの手のものが散乱していた。

箱の中から人間用らしい首輪を取り出す。見た目はペット用と何ら変わりはない。暴れる臨也を押さえ付けて首にはめる。全裸に首輪だけとは、こいつにはお似合いの姿だった。

「手前は犬なんだからその格好でいろよ。別に寒くねぇんだから大丈夫だろ」

季節は夏前だし、室内だから別に問題はない。唯一鳴き声がうるさそうだが。

「……犬じゃないし」

ぼそりと呟いた言葉にとっさに頬を殴ってしまった。ほとんど力を込めていないから、音のわりに大した痛みじゃないはずだ。
それでも臨也は殴られた頬を押さえながら部屋の角に後ずさった。殴られるのが怖いのかずっと黙っていた臨也だが、だんだん身体を揺らすような仕草を見せた。抱えている膝を擦り合わせて、何かに耐えるように唇を噛んでいる。そのまま黙って観察していると、本当に小さな声で名前を呼ばれる。返事をすれば目にうっすら涙を溜めていた。

「……トイレ、行きたい……」

さっきから落ち着かないのはそのせいか。そういえば昨日から一度もトイレに行かせていない。だからと言って俺と同じトイレを使わせるのは気に入らなかった。膝を震わせる臨也の首輪を掴んである場所へ連れていく。コートは邪魔だったから取り上げた。あまり自分から動こうとしない。よっぽど我慢しているんだろう。

「……シズ、ちゃん?」
「おら、さっさとしろよ」

臨也は訳が分からないと言った表情でこっちを見てくる。来たのはトイレではなく風呂場だ。俺の家はユニットバスではない。浴室には浴槽とシャワーがあるだけ。そこに臨也を詰め込み、早くしろと急かした。

「……ここで?」
「他にどこがあんだよ。ベランダか?道路か?」

風呂場ですると言う事、人に見られている事。その両方に恥じているんだろう。膝は相変わらず震えているくせに、一向にする気配はなかった。

「手前はトイレの仕方も分からねぇのか」
「そ、じゃなくて……」

聞けばここじゃできない、だそうだ。今からそんなことを言ってどうする。臨也のくせに意見するだなんて生意気だと思った。仕方なくズボンの裾を捲り上げて俺も浴室に入る。流石に男二人が入ると狭く感じた。

「今回だけだからな」

臨也を足を広げるような体勢で抱える。子どもが親にしてもらうような格好だ。小さく悲鳴が上がったが気にしない。
浴室にある鏡を見たらしい臨也は必死に目を反らしていた。足を広げることで、ペニスだけでなく後ろの穴まで映っている。

「やだっやだぁ……」
「やならさっさと出せって」

萎えたペニスを掴んで排水溝近くに向ける。触れただけで先端がひくひくと動いた。軽く爪を立ててやると臨也は足をばたつかせる。

「あ、やっ出るっ……出る、からぁ」
「だから早くしろって」

ゆるゆるとしごいてやると耐えきれなくなったのか、先端から黄色い液体を飛び散らした。

「ふ、あっあっあぁっ!」

浴室にはびちゃびちゃという音が反響した。臨也は耳まで真っ赤になりながら俺の腕に爪を立ててくる。全部出しきったのを確認して、シャワーで軽く流してやった。その間臨也はぼんやりと俺の動作を見ているだけだった。

ペットの躾は大事だと以前テレビの特集で見た。悪いことをしたらちゃんと叱る。そうしないといつまでも俺がすることになるからだ。

「一人できなかったからな。ケツこっちに向けろ」

何か言いたげだったが、ゆっくりとした動作で臨也は尻を向けた。向けられた白い尻に平手打ちする。臨也は痛いのか悲鳴を上げて浴槽にしがみついていた。

「や、あっ、いたいっ!」

白い肌に綺麗に赤い手形がつく。それに満足して叩くのをやめて頭を撫でてやると、臨也はきつく睨んできた。

「次はちゃんとできるよな?」
「う……あっ」
「……な?」

髪を掴んで上を向かせると臨也は嫌々ながらに数回頷いた。トイレの仕方は教えたから次は何をしようか。隙あらば俺を刺し殺しそうな臨也に冷たいシャワーをかけてやりながら、俺は段ボールの中身を思い出していた。


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