小説 | ナノ
5




仕事から帰ると、横になっていた臨也はだるそうに顔だけを動かした。ベッドの上で寝返りを打てる程度には鎖を伸ばしたが、それ以上は身動きが取れない状態だ。申し訳程度に身体にかけられていたシーツを捲る。臨也はずっと何も着ていない。最初こそ抵抗していたが、最近ではそれもなくなってしまった。
あの日。バイブを入れた状態で放置されてから、臨也はずいぶんと従順になった。今でも多少は嫌みを言ったり、反抗したりする。それでも以前のような威勢はない。手錠を外して今度は首輪に鎖を繋ぐ。その鎖の先には手枷が付いている。それを俺の手首につなげば、ベッドに繋げるよりも強度が増したように思えた。

立ち上がるのも億劫なのか臨也は這いずりながら後をついてくる。俺がいない間は常に手錠をつけているせいで、臨也の手首には摩擦痕が残っていた。浴室まで来ると臨也は何も言われなくても中へと入っていく。顔には出していないが、相当つらいはずだ。未だに俺がベッド上でも排泄したくなったら使うように渡した犬用のトイレを、こいつは一度も使っていない。俺が仕事に出かけてからずっと我慢しているようだ。見られているにもかかわらず、臨也は自分の性器を排水溝に向ける。そこに羞恥心はないようにみえる。排尿する瞬間、臨也はまるで射精した時と同じような反応をする。頬を赤く染め、息を切なげに吐く。そして肩を震わせていた。

「んぅ、ん……」

本当に犬のようだ。生活のほとんどを俺に管理されて、俺がいなければ満足に排泄すらできない。夜も俺が飽きるまで犯されては気絶して眠る。臨也はそんな毎日を送っていた。排泄し終わった臨也は自分でシャワーの水で下半身を軽く洗っていた。床を濡らされても困るのでタオルを手渡すと、僅かに息をのむのが分かった。タオルが擦れる感触ですら、臨也にとってはたまらない。それも十分承知の上だ。案の定俺にばれないように小さく息を乱しながら臨也は自分の性器を拭いていた。まだ拭き終わらないうちに、俺は臨也をベッドへと連れ戻した。何か文句を言いたげな表情を浮かべていたが、ズボンから性器を取り出せばそれもなくなった。臨也はすぐに顔を俺の性器へと近付け、手と口を使って奉仕し始めた。

罪悪感はないのかと本人に聞かれたことがある。答えは即答だ。あるわけがない。他の人間にこんなことをすれば立派な犯罪なんだろう。だが目の前で俺の性器を必死に舐めているのは臨也だ。出会った時から俺を化け物だと罵り、陥れるために手段を選ばなかった男。それが今では自分から俺の性器に頬擦りし、唾液が顎を伝うのも構わず舐めまわしている。黒い髪の毛が抜けるのも気にせず頭を掴んで、喉の奥へと吐精した。流石に苦しかったのか臨也は性器を口から出す。噎せそうになった臨也はとっさに口を手のひらで覆った。数回咳をすると手にはべっとりと精液が付いていた。

「は、あぁ……」

自分の手の平へと出されたそれをしばらく見つめると、臨也は舌を使って少しずつ舐めとり始めた。俺の出した精液は一滴も零すな。これも俺が教えたことだ。

「ん、くぅ……」

目の端に涙を溜めながら臨也は必死に飲み干した。喉の不快感から数回咳き込む。それを満足げに眺めてからまるで犬を褒めるように頭を撫でた。

「今日は久しぶりに外出るぞ」
「え……?」

臨也が驚きくのも無理はない。今の時刻はもうすぐ日付をまたぎそうな時間で、今から一体どこに行くのか。それ以前にこの部屋に連れてきてから、一度も外へ出したことはなかった。床に落ちていたコートを投げつけて、着るように促す。今まで全裸だったのだから、本来コートの下にまとうはずのシャツなどあるわけもない。手枷を一旦外されたことに安堵したのも束の間、俺の意図に気付いたらしい臨也は慌ててベッドの上によじ登ろうとしていた。

「逃げんなよ、こら」

以前にも増して威勢のない臨也を抑え込むのは簡単だ。シーツにしがみつく手を離させて、首輪に犬用のリードを繋げる。そのまま肩に抱えて玄関に進めば、案の定離せと身体をばたつかせた。

「離せ化け物!」
「そのまま騒いでてもいいけどよ、誰かに見られて困るのは手前だろ?」
「……し、シズちゃんだって困るんじゃないの?男監禁して毎日犯してるなんて幽君が知ったら……」
「別に。俺はどうでもいい。幽は悲しむかもしれねぇけど」
「……」

そう言えば途端に大人しくなる。こいつが自分の立場を危うくしてまで、この関係が明るみに出つようなことはしないという自信は少なからずあった。外に出るとコートの前をきっちりと閉めて、少しでも下半身を隠すために裾を引っ張っている臨也は逆に不自然だった。逃げられないように俺の前を歩かせているせいで、隠しきれていない尻が丸見えだった。

「ど、どこ行くの」
「犬の散歩って言ったら公園だろ?」
「……」

諦めたように臨也はまた歩き出した。歩き方がおかしいのは服装のせいだけでなく、連日の行為のせいだろう。深夜の公園は無人だった。頼りない街灯がいくつか並んだそこにはベンチがあった。そこに腰掛けようとすると、臨也が立ち止まる。

「は、早く帰ろう……もう公園はいいでしょ?」

口ぶりからして公園に来たらすぐに帰ると思っていたらしい。早く帰ろうと急かす臨也を無視してベンチに腰を下ろす。ポケットに入った煙草を取り出し火をつけると、臨也は本格的に焦り始めた。深夜とはいえ全く人通りがないわけではない。電車も終電間近であることから帰宅途中の酔っ払いが通ることも考えられる。しっかりと取り付けられたリードのせいで逃げることもままならない臨也はただ俺の咥える煙草の火をじっと見つめていた。一本吸い終わるのにそう時間はかからない。吸殻を携帯灰皿にしまうとあからさまに臨也は安心したような表情になった。

「……なぁ、そのコートめくってみろよ」
「な、何言ってるの?」
「うるせぇな。このままコンビニまで買い物行くか?」
「……っ!」

店内に入らなくとも、あの辺りはここよりも人通りが多かった。それを想像したらしい臨也はサァっと顔を青くした後に、羞恥心からか顔を赤くした。器用な奴だ。コートの裾を持った臨也はゆっくりとそれをめくっていく。徐々に露わになる下半身。そこには半勃ちになった性器があった。先走りをわずかに溢れさせているそれは、ふるふると震えている。

「もう、いいだろ……」
「嫌々言いながら勃起させんなよ変態」
「だ、誰のせいでこんな……!」

毎日飽きもせず行為に浸っているせいで、本来この時間は臨也に突っ込んで色々としているときだ。さっき俺のをしゃぶったのもあって身体は熱を持て余しているんだろう。

「尻向けて四つん這いになれよ」
「そんなのするわけ……!」
「……返事は?」
「っ……!」

くいっと引っ張ったリードのせいで首の締まった臨也は顔をしかめる。地面と俺を数回交互に見た後、意を決したようにそこへ片膝をつけた。ここの地面は砂ではなくコンクリートだ。石がないだけましとはいえ、そこに素肌が触れるのは痛いんだろう。向けられた尻は街灯に照らされ、僅かに開いた太ももの隙間からは性器が見えた。赤く色づいた尻の穴を指の腹でなぞると、白く柔らかい尻は小さく震えていた。

「ふ、あ……」
「もう突っ込めそうだな……ほら、おねだりしてみろ」
「誰、が、そんな……ひぅっ」

穴を撫でていただけの指を中へと沈めていく。慣らしてもいないそこはしっとりと濡れていて、指をこれでもかと締め付けていた。もう片方の手で袋を揉んでやると太ももは左右に開かれていく。

「ほら、おねだりは?」
「……っ」
「……駄目犬」

悔しそうに唇を噛み締める臨也は目に涙を溜めていた。それが生理的な涙なのか感情から来るものなのか。俺には関係ない。手早く下着から性器を取り出して、臨也の尻に押し付ける。白く柔らかな肌をねっとりと先走りが汚した。尻の肉を掴み左右に引っ張ればよく見えるようになったそこ。街灯に照らされながら、ヒクヒクと疼いている。腰を押し付ければ、静かな公園に臨也の悲鳴が上がった。

「くぅ、ん……あっああ!」
「お、今の犬っぽかったな。おら、もっと鳴けよ」
「うあぁ……あ、あぐ、んぅっ!」

腰を掴んで引き寄せれば地面に着いた手足が引き摺られて臨也は痛みに顔をしかめていた。それでもより深く性器を飲み込んだそこはヒクヒクと動いている。そのまま中に出すと臨也は甲高い悲鳴をあげて同じように射精した。地面へと飛び散った精液は白い水たまりを作る。自然にはなくならないだろうそれ。おそらく明日には近所の子どもによって見つかるのだろう。

「今の声、誰かに聞こえたかもな」
「さ、最低……」

言葉は今にも噛みつきそうだが、腰を少し動かしてやればすぐに喘ぎ声だけになった。臨也の射精して萎えていた性器が勃起してきたのを確認して、腰を掴んで俺の膝に座らせる。重力のせいでより深くなったそれに臨也は身体を震わせていた。

「う、ひぃ……あ、あぁ」
「まだイくなよ」

返事も何もしないことから相当きついんだろう。そのまま片足を掴んでするすると身体を回転させる。普段は当たらないようなところまで俺の性器に突かれ、その度に臨也は身体を震わせた。身体を180度回転させると互いに向かい合う体勢になった。間近に感じる臨也の呼吸は荒く、熱かった。

「これ、なに……」
「……このまま突っ込んだまま帰ることにした」
「な、何言ってるのシズちゃん……?」
「犬みたいに四つん這いで帰らせようと思ってたけどよ、やっぱその方が面白いよな」

臨也の背中を支えて俺が立ち上がったせいで臨也の抗議が言葉になることはなかった。落ちないように首に回された腕。耳たぶを甘噛みして舌を差し込んでやれば、すぐに喘ぎ声を漏らすようになった。

「ひ、う、あっあぁっ!」
「次は何しようか、なぁ……臨也」
「ひぐぅ!」

すでに性器を受け入れているそこに指を突っ込んでかき回せば俺の首にがぶりと噛みついてきた。声を抑えるためなのか、仕返しのつもりなのか。大して痛くはない。わざとらしく揺らして歩く。ここから家まではどれくらいだっただろうか。

「や、んぅ、あ、あぁっ!」
「とりえず、ますは主人に噛みついたお仕置きしてやらねぇとな」


今日も夜は長い。












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