小説 | ナノ
つまり愛しているのです






「六臂さんは人間が好きなんですか?」
「……は?」

テーブルの上には2つ並んだティーカップ。僕のには砂糖も何も入っていないコーヒー。月島のは温められたミルクが入っていた。その白い水面に角砂糖を放り込みながら、月島は不思議そうに首を傾げた。彼からよく分からない質問をされるのはよくあることだ。

「……何でそう思ったの?」

そのときはとりあえずそう返している。質問を質問で返すのは卑怯だとは思うけど。

「えっと……俺も六臂さんも、少なからずあの二人の影響を受けてまよね?でも津軽さんやサイケさんほどじゃない。だから六臂さんは臨也さんの思考や思想とどこまで同じなのかなぁと」
「……」

ミルクを一口飲むと、月島はさらに角砂糖を入れていた。
たまにだけど、月島は珍しいことを考えている。確かに臨也は僕やサイケ、日々也の原型ではある。深層心理のようなものは突き詰めてみれば同じかもしれない。だがあくまでも別の生き物だ。僕からすれば、全員顔しか似ていない。

「……どちらかと言えば、僕は臨也と正反対だよ」
「じゃあ嫌いなんですか?」
「……どうしたの、いきなり」
珍しく熱くなっている月島は、すみませんと謝罪して肩を落とした。もちろん僕は月島の問いに対して苛つきも何も感じていない。今僕と月島は向かい合うようにテーブルに腰かけていた。立ち上がり隣に座ると月島は一気に緊張したようだ。

「し、静雄さんが言ってたんです。元からの性格とはいえ、自分以外に愛情を向けられるのは嫌だって。それが個人だろうと大勢だろうと」
「……月島は僕が人間嫌いって言えば嬉しいの?」

第一普通に生きてる人間は臨也のように人間が好きか嫌いかなんて、いちいち言わないと思うのだけど。

「……よく分かりません。俺はどんな六臂さんでも大好きですから。でも静雄さんと同じで、六臂さんが他の人に夢中になるのは嫌です……」
「僕も同じだよ。怒りっぽい月島でも、優しい月島でも何でもいい。でも、僕のこと好きって言ってくれる月島が一番好き」

肩に頭を乗せると、手を握り締められる。少し汗ばんでいるそれは、指先をすりすりと擦り合わせてきた。

「でも、あんまりあの二人と比べないでよ」
「え……どうしてですか?」

きょとんとする月島の頬に手を添えると、同じように重ねられる。目を閉じれば遠慮がちに唇を重ねられた。もっと深いものがしたかったけど、月島が驚いて倒れそうだからやめておく。

「……僕の月島を好きという気持ちまで、あの二人の影響だとは思いたくないよ」

指先をきゅっと絡めると月島は、赤くなった顔をマフラーに埋めてしまう。隠しきれていない額に口付ければ、小さな悲鳴が上がった。きっと今泣きそうなのは、幸せだからだろう。
















アンケートより「甘々な月六」でした。月島くんはシズちゃんの中の人イメージです。


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