目を覚ますと最初に聞こえたのはギシギシとベッドの軋む音だった。真っ暗な視界に慣れてくると、ここがクローゼットの中だと言うことが分かった。確か急に狭いところに入りたくなって、たまたま目に入ったここで寝てしまったみたいだ。僅かに開いた隙間からは、ベッドの上がよく見えた。 「……」 そこに居たのは静雄と臨也だった。何をしているかだなんて、わざわざ言いたくない。あの二人はよく分からない。あの行為は愛し合った者同士でがすることだ。なのに顔を合わせれば喧嘩ばかり。人間の愛というものはよく分からない。どうせ出れないのだからまた眠ろうかと目を閉じた時だった。 「……?」 ぎゅっと手を誰かに握られる。寝起きでぼんやりとした意識のままその手を辿ると、半泣きの顔をマフラーに埋めた月島と目が合った。 「……」 「ろ、六臂さん……」 「……何で月島がここにいるの?」 今にも飛び付いてきそうな月島を牽制しながら、声を潜めるように人差し指を唇の前で立てる。するとハッとしたように月島は自分の口を押さえた。 「六臂さんが寝てるの見つけて、俺も眠かったし一緒に寝ようと思って寝たら……うう」 「……そう」 彼も運がなかったなぁと思いながら、あれが終わるまでやっぱりまた寝ることにした。 「あ、ま、また寝るんですか?」 「だって、まだ出ていけない……」 「や、やですよ!寝ないでください!」 月島に肩を掴まれて前後に身体を揺らされる。 「起きててどうするの……?」 「……じゃ、じゃあちょっとお願いしたいことがあるんですが……」 月島は改まるように正座をすると、マフラーに顔を埋めた。板一枚の向こうからは聞きたくもない声。さっさと耳を塞いで夢の世界に行きたかった。 「六臂さんにくっついたら心臓がドキドキして周りの音とか聞こえなくなるんで、ぎゅってしてもいいですか?」 「……別にいいけど」 それってどういう意味。そう聞く間も無く月島は僕の背後に回ると、そのままぎゅっと抱き締めてきた。 「す、すみません。失礼します」 「……」 耳を澄ませると早くなっている鼓動が聞こえた。一定の間隔で刻まれるリズムは心地のいい音だった。 「六臂さんって、いつもいい匂いしますよね……」 月島の鼻先が僕の首筋に当たる。くすぐったくて後ろを振り返ると、すぐそばに同じように月島の首筋があった。マフラーをずらして近づいた。 「……月島は変な匂いするよ」 「え!?」 「……でも、嫌いじゃない」 「そ、そうですか……良かった」 「もう1つ……我が侭言ってもいいですか?」 「ん……」 「えっと、あの……その」 「……」 月島の顔は真っ赤で今にも火が出そうだった。このままだといつまでも言えないだろうに。仕方がなく助け船を出すことにした。何だかんだ言って、僕は月島が好きなのだ。 「……寝る前にさ、あれしてよ」 目を閉じて、顔を月島に近付ける。何がしたいのか察したのか、気配が近くなった。ふにゅっと触れた唇は乾いていて、少し痛かった。それを潤すように舐めてやると、よく分からない悲鳴があがった。相変わらず反応の面白いやつだ。 「じゃあ……おやすみ、月島」 「あ、はいっ!おやすみなさい、六臂さんっ」 そんな大声を出すなんて。きっと静雄と臨也に居るのがバレただろうに。その方が都合がいいのだろうか。いつの間にか聞こえなくなった臨也の声に満足しながら、僕はまた月島の心音に耳を傾けた。 月六は純粋ですね。手を繋ぐだけで満足な雰囲気。キスしたら孕むレベル。 |