いつも不思議に思っていた。津軽さんとサイケさんは気付くといつも唇同士をくっ付けている。それは頬っぺたと唇のときもある。くっ付けた後はお互い顔を赤くしながら、とても幸せそうに顔を見合わせて笑っていた。どうしても気になって夜も寝れなくなってきたから、思い切ってサイケさんに聞いてみた。 「……ちゅー?」 「うん、ちゅーだよ!」 「その、好きな人……には、ちゅーするんですか?」 「おれとつがるはすきすきだから、まいにちちゅーするの!」 なるほど。あの唇をくっ付けるのはちゅーというらしい。あれをするのは好きな人に対して。そういえば一度だけ、臨也さんが静雄さんにしているのを見たことがある。臨也さんは静雄さんが好きだからちゅーしたのか。俺も好きな人にちゅーしたい。 ずっと寝ていた六臂さんが水を飲みに2階から降りてきた。ふらふらと足元が覚束なくて、落ちたら大変だから慌てて駆け寄った。ちょっと踏み外してふらついた六臂さんを、ぎゅっと抱き締める。 「……六臂さん」 「つき、しま?……んぅ」 寝起きでぼんやりしている六臂さんの唇に俺のをくっ付けた。ちょっとかさついた唇はなんだか甘くて、時間も忘れてちゅーをした。息苦しくなって唇を離すとポカンとした六臂さんの表情。 「好きな人には、ちゅーするそうなんでしてみました」 「……」 六臂さんは固まったまま動かない。どうしたのだろうかと首を傾げていたら、サイケさんにマフラーを引っ張られた。 「つ、つきしまくん!ちゅーしていいのは、りょうほうすきどうしだよ!」 「え、あ……そ、そうなんですか」 どうしよう。両方好きじゃなきゃしてはいけないだなんて。六臂さん嫌だっただろうか。腕に抱き締めたままの六臂さんは俺の首に手を回すと、そのまま背伸びをしてきた。勢いよく近付いてきた六臂さんの唇は俺のに押し当てられる。 「……好きな人には、これをするんだろ?」 「は、はい……」 「そう、知らなかった」 ちゅっとまた六臂さんはちゅーをした。好きな人にはちゅーをする。俺は六臂さんにちゅーをした。だって好きだから。六臂さんも俺にちゅーをした。つまり六臂さんは俺のこと。 「……ろ、六臂さん」 「ん……月島の顔、赤い」 「六臂さんも赤いですよ……?」 「……そう」 (……あれどうにかしてよ日々也) (私に言うな。臨也がどうにかしろ) (おれもつがるとちゅーをするのぉ!ちゅーっ!) ((……)) 臨也と日々也は毎日ノイローゼです。目の前でこれでもかとキスをしてる人たちがいるので。 |