小説 | ナノ
かごのなか



グロ注意。




ただ、ただ嫌なだけだった。あいつの目に俺以外の奴が映るのが嫌だ。ただそれだけの理由。

「好き、好きだ臨也」

悲鳴を上げて床の上をのたうち回る臨也を押さえつけて、もう片方の目にも針を刺した。こんな金切り声みたいな悲鳴、映画でも聞いたことがない。所詮は演技なんだな。
床には傷口からあふれた血が赤い線を作っていた。意外と血が出ないんだ。もっと吹き出るくらいに出ると思っていたのに。そう言えば口に詰めたタオルが外れてしまっている。通報されたら面倒だから、臨也の唇を塞いだ。歯はガチガチと震えていて、あぁ痛いんだなと思った。
肉体的な痛みは理解できなくても、心の痛みは俺でも分かる。俺がお前の為に痛めた心と、今のお前が感じている痛みはどっちが痛いのだろうか。

俺って嫉妬深いのか。気絶した臨也の目に白い包帯を巻きながら思った。暴れたせいで手足にはいくつか痣ができていた。縛っておくべきだった。痣のところを撫でると、臨也の身体はピクリと震えた。白くて細い身体。俺が少し力を入れたら壊れてしまう弱い身体。目を潰したが、まだ足があるから逃げられるかもしれない。足を潰した方が良かっただろうか。切り落とさなくても腱を切るとか、方法は他にもあるかもしれない。少し変態と思われるかもしれないが、俺はこの足が存外気に入っていた。

「……シズちゃ、ん……」

それが、臨也の最後の言葉だった。



臨也は一日動かない。俺のベッドの上に座って、ただぼんやりと見えないどこかを見ていた。話しかけても返事はないし、自分から食事をすることもない。毎日替えている包帯の下は完全に視力をなくしたようで、針を刺した痕は綺麗に消え始めていた。自発的に動かない臨也を少し面倒に思いながら、それでも愛しくて全部やった。

しばらくすると、知らないうちに臨也は喋れるようになっていた。

「シズちゃんってさ、色々と意外だよね。甘いものが好きだなんて」

「え?馬鹿になんかしてないよ。可愛いなぁって思っただけ」

「顔真っ赤だよシズちゃん。新羅に見せたいくらい面白い……」

臨也は今までと同じようにどこかを見ていた。内容を聞いていると、前に俺とした会話ばかりだった。嬉しそうに話す臨也は以前と変わらないように見えて、全くの違う物になっていた。
もしかすると俺の存在に気づけば、また前のように話せるのかもしれない。きっと目が見えないから俺が見えていないんだ。
そう思って俺は臨也の肩に触れた。きっと優しく手を添えてくれる。そう思っていたが、手に感じたのは叩かれたことによる鈍い痛みだった。

「……けて」
「……臨也?」

臨也は見えないはずの目で俺を見た。正確には顔をこちらに向けただけだが。カタカタと震えだした臨也は今までの笑顔と一変した。

「たすけて、たすけて、助けてシズちゃんっ」

聞いたことのないような声で叫びながら、ベッドの上を後ずさる。まるで近寄るなと、腕を必死に振り回しながら。

「嫌だ嫌だシズちゃんどこ?何でいないのどこにいるの俺が助けてって言ったら助けに行くって言ったじゃないか!嘘つきやだごめんなさい謝るから助けてもうわがまま言わないから助けてシズちゃ……っ」

気がついたら、臨也の頬を叩いていた。力加減なんかできなくて、細くやせ細った体は簡単にベッドから落とされた。慌てて起こそうとすると、気配で分かったのか腕を振り払われる。

「シズちゃん、シズちゃんやだ……」

やせ細った臨也の身体は自力では歩けないほどになっていた。今にも折れそうな腕を使いながら必死に俺から逃げていく。あいつの後ろ姿なんて今まで喧嘩をしてきて何度も見たのに、その面影を全く感じさせないものになっていた。

「シズちゃん……シズちゃん……」

そううわ言のように呟きながら、臨也は床を這いずった。畳に擦れたせいで、肌に擦り傷をたくさん作りながら。目の前にいる俺ではなくて、臨也の思い出の中の俺を探して。
















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