シズちゃんはキャベツをめくっていったら、赤ちゃんが入っていると信じていたらしい。ちなみにキャベツが不作のときは代理でコウノトリが運んで来るんだって。 シズちゃんもなかなかだけど、それを聞いた第一声がそれかわいいね、だった俺もどうかしてる。 最初はふざけてるのかと思ったけど、目は本気だった。23歳にまでなってそれは怖いし、危ないからちゃんと教えてあげた。 本当は真実を聞いたときのシズちゃんの反応を楽しむつもりだったんだけど。 なのにシズちゃんは気味が悪いくらい熱心に話を聞いてくれて、意外にもすんなり納得してくれた。真面目に俺の話聞いたの初めてじゃないか。 ずっと疑問だったらしい。いくら畑のキャベツむいても、どこにも赤ちゃんいなかったって。被害にあった農家には、かける言葉もない。 「やっぱりな……なんでキャベツなんだ、レタスとか白菜でもいいじゃねぇかって思ってた」 「もっと違うところに気付くべきだよ」 どんな基準なのか分からないけど、分かってくれて良かった。絶対キャベツから生まれるとか意地張って、赤ちゃん見付けるまで畑荒らされたらどうしようかと思ってたし。だって、キャベツ泥棒で捕まるとかダサすぎるよ。 「なおさら、楽しみだな」 「……へ?」 シズちゃんは吸っていた煙草を携帯灰皿に入れる。前にポイ捨ては最低だって言ったら、馬鹿正直に買ってきたやつだ。 「だってよ、腹から子ども出てくんだろ?」 「そうだよ」 「キャベツから出てくるより、手前からの方がやっぱり……なぁ」 「……シズちゃん?」 彼は一体何を言っているんだろう。ちゃんとおしべとめしべの話はしたよ。卵子とか精子とかシズちゃんには難しすぎるだろから、まずはそこらの花からで十分。色々と濁したけど、大事なことははっきり言った。 男と女じゃなきゃ子どもはできないって。もう忘れたの、シズちゃん。 「手前に似てもいいけどよ、性格は似たら困るな」 「……」 「一人は可哀想だから二人くらいがいいな。俺らみたいに喧嘩しなけりゃいいけど」 「……シズちゃん、あのね」 「あ?名前の意見くらい聞いてやるよ。俺らの子どもなんだからな、変なのつけんなよ」 シズちゃんの目は、キャベツの話よりも本気だった。ちゃんと分かりやすく説明したじゃない。無理なんだよ、俺は女じゃないよ。おしべだけじゃ赤ちゃんは来ないんだよ。いい加減理解しなよ単細胞。 「……愛とか、可愛いよね」 駄目だ言えない。俺だってほしいよ、シズちゃんの子ども。 どこに行けばいるかな、俺とシズちゃんの子ども。君に似たら優しい子だろうね。優しくて人一倍傷付きやすい子だろうから、俺たちで守ってあげないと。 「ちょっと色々気に食わねぇけど……まぁ、可愛いっちゃ可愛いか……」 「ね、シズちゃん。焦らなくても大丈夫だよ。まだまだ時間はあるんだからさ」 「そうなのか?」 「うん、だからさ……」 (一緒に探そうか、世界中のキャベツ畑) (俺とシズちゃんの子どもが見つかるまで) |