獣化とかじゃなくて、ホントに犬と猫です(笑)誰得?俺得! でかい図体が俺を逃がさまいと、必死に行く手を遮っていた。押さえつけるように上に乗られれば、体格差からして俺は動けなくなる。 ハッハッと忙しない息遣いをしながら、あいつは腰と言うか主に下半身を押し付けてきた。 「やめろって!馬鹿じゃないの?猫に欲情するとかありえないんだけど!?」 「可愛い手前が悪いんだろ」 「そんなこと言われても嬉しくないよ!!」 どうやらシズちゃんは、猫である俺に対して欲情するらしい。オスって事実だけでも十分無理があるが、まさか犬にそんな目で見られるとは思ってもみなかった。常日頃から好きだ好きだと追い回され、日課だった昼寝すら満足にできない。お陰で俺の安眠は主人がいる間だけだった。 力勝負では圧倒的に不利で、シズちゃんは動けない俺の耳を舐めたり、匂いを嗅いだりしてきた。濡れた鼻先がくすぐったくて、変な声が出る。 「ふ、にゃぁ……ん」 「おら、諦めろって。痛くしねぇから」 「んにゃ……ふざけん、なぁっ」 「舐めるだけでいいからよ」 「そ、それも嫌に決まってるだろ!」 「いてっ」 隙をついてシズちゃんの鼻を噛んでやった。もちろん本気ではなくて甘噛み程度だ。力では負けても素早さなら負けない。俺は慌ててシズちゃんが来れないような食器棚の上に登った。案の定シズちゃんは登れなくて、下でぐるぐると歩き回っている。いい気味だ。しばらくこの少し埃っぽい所で避難しておこう。 「……なぁ、降りてこいって」 「……」 俺に降りる気がないと分かったらしいシズちゃんは、シュンとしながら悲しそうに鳴き声を上げていた。そんなことしたって俺は何にも思わない。ちょっと可哀想かなとか、そんな反応されると嬉しいというか。 知らず知らず俺は尻尾を垂直に立てていた。これは嬉しいときになる自然現象だ。必死に下がるように力を込めてもビクリともしない。 「し、シズちゃん……」 先に我慢できなくなったのは俺の方だった。下に顔を覗かせれば、あいつは耳までへたりと垂れさせて床に寝転んでいた。 「……なんだよ」 「な、何にもしないって約束するなら……けっ毛繕いくらい、してあげても……いいよ」 でも変なことしたら引っ掻くから!と念を押すと、シズちゃんは千切れるんじゃないかと思うくらい尻尾を振って喜んだ。それを見てやっと下がりかけていた俺の尻尾は、即座にピンと立ち上がってしまった。 仕事から帰ってきた主人が毛繕いし合う俺たちを見て、ホントに仲が良いなぁって呟いた。まるで肯定するみたいにシズちゃんはワンと一鳴き。 別に仲良くなんかないからって意味を込めて、俺はシズちゃんの鼻に噛みついた。 ちょっと面白いといいますか、興味深い動画を紹介して頂いたので突発的に。素敵動画ありがとうございました! |