※臨也が酷い。暴力表現あり。 何だかよく分からないけど、いざやくんはおれに酷いことする。身体に針をいっぱい刺したり、ナイフで色んなところを切ってみたり。 おれは『人間じゃない』らしいから、痛くもなんともない。むしろそれをやっているいざやくんの方が痛そう。いつも笑い声上げながら切ってくるけど、顔はすごく泣きそうだもん。 人間に似せて作られた身体には、赤いドロドロした何かが流れてる。ケガをすればそれが流れる仕組みだから、いつもおれは赤色にまみれてる。 真っ白なコートがほとんど赤くなった頃、いざやくんは満足したように手を止めた。ちょうどおれの口に画鋲を入れようとしていたときだった。 それからいざやくんは包帯を巻いてくれる。腕だけじゃなくて足もお腹も。顔だけはいつも何にもしない。誰かにバレたら怒られるからかな。 「そんなことしなくても、いっぱいねたらなおるのに」 「俺がしたいからしてるの。サイケは口答えしない」 「……わかった」 いざやくんの言うことは絶対。言うこと聞かないともっと酷いことされる。おれに何かするんじゃなくて、つがるに同じことしようとする。つがるが痛みを感じるかは知らない。でもこんなの、つがるにされたくないもん。 包帯だらけになったおれの身体をいざやくんは写真に撮った。それをアルバムにしているのを、おれは知ってる。どうして撮るのかは分からないけど、いざやくんはすごく満足そう。でも今日は何だかいつもと違う。 「……やっぱり悲鳴上げないと面白味に欠けるな」 いざやくんはカメラをソファに放ると、おれの頭をいい子いい子って撫でた。何だか知らないけど、機嫌悪くなったみたい。いざやくんが理由もなく、おれの頭撫でるわけないもん。 「サイケには痛みを覚えてほしいなぁ」 「いたみ?」 「そう、痛み」 いざやくんはおれの髪の毛を掴むと、思いっきり引っ張った。やっぱり機嫌悪い。ぶちぶちって髪の抜ける音がする。痛くはないけどそのまま引きずられて、お外が見える窓の前まで連れてこられた。 「普通はね、こんなことされたら痛いんだ」 ぐわんって勢いをつけると、窓に頭をぶつけられた。まるでこの前テレビで見たシーンみたい。同じことされた男の人は赤いのいっぱい流して、最後には動かなくなってた。でもおれは何回されても平気だ。これがおれと人間の違いなのかな。 「まど、われちゃう」 あんまり何回もバンバンって頭を窓にぶつけるから、頭がくらくらした。たぶん中の機械がおかしくなってるんだと思う。 「……一気に潰すのは駄目か、じゃあ部分的に壊そう」 いざやくんはぶつけるのをやめた。おれの頭の中では何か鳴っている。たぶん機械がおかしくなったんじゃないかな。ふと窓を見たら傷一つなかった。凄いなぁって感心してたら、いきなりいざやくんに蹴られた。びっくりして床に倒れてしまう。 いざやくんはおれの上に乗ると、足で両手を踏んできた。ちょっとやそっとじゃ逃げられない。今度は何をするのかなぁって思ってたら、突然おれの目に指を入れてきた。 「ひ、ぐっ……や、やめて!」 「ははっ痛がってるみたい」 いざやくんの指がおれの目をぐりぐりしてくる。痛いわけじゃない。でもいつもと違う。ナイフの感触でも、針でもない生暖かい指。それが酷く気持ちが悪い。 回線がショートしてるのか、中でビリビリいってる。ブチって音がして、右の方だけ何にも見えなくなった。見えなくなったのがいざやくんにも分かったみたいで、もう片方の目にも指を入れようとしてきた。 「みえない、みえないのやだぁっ!」 これじゃつがるの顔が見えない。どんなに身体をボロボロにされてもいいけど、目や耳が使えないのだけはいや。そんな身体じゃ、つがるを感じられない。 「うるさいなぁ、そんなに嫌なら津軽の目も潰すよ?そしたらお互い見えないんだから、視力とかどうでもいいじゃん」 「い、いやだっ!」 いざやくんは卑怯だ。おれがつがるの名前出されたら、言うこと聞くしかないって知ってる。だからあんまりいざやくんは好きじゃない。でも、嫌いにもなれない。 「……最初から大人しくしてればいいんだよ」 ぐりぐり、バチバチ。さっきと同じ音が聞こえる。これは治るのかな。治らなかったらどうしよう。つがるの顔、忘れたりしないよね。 「さぁーて、次は何潰そうかな……」 おれといざやくん、どっちが先に壊れちゃうのかな。 突発的に酷い臨也を書きたくなります。 自殺願望があることに気付いた臨也はそれを抑えるために、同じ顔のサイケに本来自分の身体につけたい傷をつける。その姿を見ることで心を落ち着かせてる。 死にたいけど、まだ死ねない臨也。臨也が壊れてしまわないか心配してるサイケ。 |