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さよなら怪物






シズちゃんは昔からよく分からない。暴力が嫌いだって言うくせに暴力振るうし、平和に生きたいって言う本人が平和を乱してる。
愛されたいくせに自分から誰も愛した事がない。理由は簡単怖いから。シズちゃんは矛盾だらけだね。そう言えば苛立ったように髪を引っ張られた。痛い。

「どうしたらシズちゃんは人間になれるんだろうね」
「……知るか」

シズちゃんはそう言って、俺の肩に顔を埋めた。嫌いだ、殺すって言うくせに、まるで壊れ物扱うみたいに俺を触るんだ。本当に変なやつ。

「シズちゃんは人間になれないよ、絶対に」

きっと手入れをしていないのだろう髪をすいてやりながら、呪文のように囁く。シズちゃんはずっとこのままなんだ。皆に嫌われて、怖がられてひとりぼっちなんだよ。

「……お前がいるなら、それでいい」

俺を抱き締める腕に力がこもった。痛いなぁ。シズちゃんは俺が大事らしい。だから毎日会いに来るんだ。毎日、毎日。俺が生きているかどうか確認しに来る。ちゃんとこの世界に存在してるか。

前まで怒った顔しかしなかったのに、今は俺の顔を見ると凄く優しい顔になる。それが吐き気がするほど嫌だった。だってそれは、シズちゃんが人間になった証拠なんだよ。

「お前さえ居てくれたら俺はいい」

昔のドラマでありそうなセリフだね。俺はシズちゃんだけだったら嫌だなぁ。もっと他の人間といたい。もっと、違う人間。

「好きだ、臨也」





(それは、俺が世界でひとりぼっちになった瞬間だった)




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