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純粋な殺し文句(1/2)

たった今、赤也は頭を抱えていた。
なぜなら、今の時間が彼の大嫌いな英語だからだ。
サボろうか、とも考えたのだが、それを思いついたころにはすでに始業のチャイムが鳴っていたため、教室から出られなくなったのである。
それまでの休憩時間は、ずっと裕里としゃべっていた。

彼女について分かったことは、人見知りが激しいこと。
そのせいで、クラスに友達がいないこと。
(これには赤也も目を丸くした)
それくらいだ。


しかし、先ほど自分と仲良く話していたあれが、すべて演技だとしたら?


そんな考えにも行きついたが、なんとなくそれはない気がした。
理由は、赤也にもわからない。
強いて言うなら、あまりにも初々しい言葉と反応に、彼女の人柄が見えた気がしたのだ。


ふと隣を見ると、裕里が何か言いたげに口をパクパクしていた。

「真野、どうかしたか?」

『っあ、あああの……えっと、その、あの……!!』

不思議そうに見てくる赤也に、裕里は顔を青くした。

赤也が大丈夫か、と声をかけようとすると同時に、赤也の頭に激痛が走った。


「ってえぇぇッ!!」


思わず両手で頭を抑えて呻くと、頭上からいかにも楽しそうな声が聞こえてくる。

「ほぉー、切原のクセに俺の授業……つーか英語の授業でよそ事を考えるたぁ随分ヨユーだなーオイ?切原のクセに」

キッと声の主を睨みつけると、そこには口元をニヤつかせた、なんとも腹の立つ顔をした英語の教師がいた。

「っんの暴力教師……!」

そう言って文句を言ってみるものの、悪いのは授業を聞いていなかった赤也なので、歩が悪い。
チラリと隣に目を向けると、あわあわと顔を青くしている裕里がいた。
どうやら彼女は、赤也に近付く教師の姿を伝えようにも伝えられず、さらに赤也が殴られたことに責任を感じているらしい。

そんなことはお構いなしに、赤也をはたいた当の本人は、「話聞いてねェお前が悪い」と相変わらずニヤニヤした顔で言い放ち、教卓へと戻ろうとした。

……が、ふと思い出したようにこちらを振り返った。


「切原は今日の放課後に補習な、補習」

「はぁ!?」

ぎょっとしたような顔をした赤也を見て教師はしてやったりな顔をして、サボるなよーと軽い調子で言ってのけた。


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