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初めての抵抗(1/2)


「裕里。切原赤也から離れなさい」

『え?』


小学校のころはよく遊ぶこともしていた幼馴染みの言葉に、裕里は目を丸くした。


それは、午前中に届いた1通のメールが始まりだった。










相良美緒は、実に聡明な少女だった。

まず、テニス部のみんなに、他の子よりも巧く近づく。
ミーハーだということを隠そうとはしない。

だが、ファンクラブ会長の親友である。という点でも、まずファンクラブ一同から一目置かれている。

そして、変に馴れ馴れしくファンクラブに近づかず、常に「友達」としてみんなに近づく彼女には、少なからず好感が持てた。

それはテニス部のメンバーも例外ではない。
ベタベタとひっつかれるよりも気が楽に持てるため、彼女のようなさっぱりとした付き合い方には他の女子のように嫌悪もしていなかった。


それに、ファンクラブが変な暴走をしないようにブレーキをかけているのも彼女だと聞く。

何より、話し上手で聞き上手。これには、詐欺師である仁王雅治も舌を巻いた。





そんな彼女のモットーは、自己保身だ。





いつ、いかなる時でも、一番守るべきは自分であり、他人はその次。
自分を守るためなら親友も売るし、大切な幼馴染みだって盾に使って見せる。

彼女がテニス部メンバーと仲良くしながらも巧妙にファンクラブをもまるめこむのにも、これが関係している。


テニス部のファンでいないといことは、かなり周りから浮くこととなる。それは、多感な思春期の女子の中では辛い状況だ。

彼女の大事な幼馴染みは、まぁ、もとが地味なのであまり目立ってはいないようだが。


しかし、ただファンクラブでいるだけだと、テニス部メンバーそのものから嫌悪の対象にされることは目に見えている。





それなら。



その両方と巧く付き合うしかない、でしょう?






彼女はそう考え、クラスやクラブでおちゃらけた道化役を買って出ては周囲を笑わせ、相談にも乗ってその話術で巧みに相手を惹きよせる。
テニス部ではミーハーのように振舞いながら、その実しつこく追わず、あっさり身を引く。

そのことによって、彼女は周りと“巧く”付き合っていた。


そんな変に強かな彼女だが、やっぱり幼稚園時代からずっと一緒に育った幼馴染みは可愛いものである。
そして、そんな可愛い幼馴染みが最近、テニス部の切原赤也と仲がいいと聞いた時には、本気で驚いた。

想像するに、何か彼女とアイツが関わり合う何らかがあったのだろう。委員会が同じだとか、隣の席だとか、そういう些細な言葉でも交わすことのある関わりが。

変に女を毛嫌いしている赤也だが、元をたどればそれは「変に馴れ馴れしいテニス部ファンの女」が嫌いなのだ。


しかし、裕里は人見知りが激しいので、自分くらいしか気兼ねなく話せる知り合いはいない。

そして妙に純粋な彼女は、恐らく切原赤也の"外面"じゃなく、"中身"を見るのだろう。

そんな彼女を、子どものように真っすぐな性格の切原赤也が放っておくとは思えない。


自分と仲良くなってくれた赤也を、裕里は優しい人だと思う。


さぁこれで。
仲良し2人組のできあがりだ。


しかし、そんなことをすれば当然、ファンクラブの女子……いや、全校女子全員から目をつけられる。
それは、あの呑気な幼馴染だって例外ではない。

リンチなり虐めなり、何か始まるかもしれない。

そうすると、いくら話術が得意だと言っても、美緒だけでは止めるのが難しくなってくる。





だからこそ、美緒は先手を打つことにした。

それなりに大事で、それなりに可愛がってきた。
大切な、幼馴染のために。









Dear:真野裕里
From:相良美緒
件名:無題
<本文>
今日の昼休み、裏庭に来てくれる?


Dear:相良美緒
From:真野裕里
件名:Re無題
<本文>
うん。分かった!

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