※沖田視点


丑の刻。

夜の巡察している隊士以外の隊士や幹部の殆どの者達が寝静まる頃。

―とある一室を除いては。

「……ケホ、ケホケホッ」

喉の中に何かが引っ掛かったような感覚がして思わず咳込む。
そのせいで眠りから覚醒し目が覚めてしまった。

やがて咳が落ち着き沖田は、はあ…と溜め息を吐く。

咳込んだせいもあってか額にはうっすらと汗が滲む。

夏は過ぎたとはいえ残暑が残る時期。夜はまだまだ寝苦しかった。
汗ばんだ肌に張り付く寝間着が不快感を生む。

咳込んだ事と寝苦しさのせいもあって目が冴えてしまい、少し縁側に出て空気でも吸おうと思い立ち障子をスッと開ける。


昼間。
土方に夏でも夜は冷えるから羽織を傍に置いとけよ…と小言を言われた気がしたが、構わず縁側に座りぼーっと庭を眺める。

心地よい風が吹きサラサラと髪を揺らす。
汗ばんだ肌に風が当たり、暑さのせいで火照った身体を丁度良い具合に下げてくれる。
それが気持ち良くてゆっくりと瞼を閉じる。


―それから少し経った頃だっただろうか。


「暑いとはいえ夜は冷えるぞ。何か羽織ったらどうだ、沖田」

気配もなく現れたその声に弾かれたように目を開けるとそこに金色の髪に緋の瞳をした人物。

「風間……千景」


今現在夜半である。屯所は今寝静まっているし、襲うなら絶好の機会だ……と言いたい所だがどうやら戦意はないらしい。


「なんだ、てっきり睨み付けながら何しに来たとか言うとでも思ったが…」

風が吹いて金色の髪をサラサラと揺らす。月を背に立つその姿はとても様になっていて、敵だというのにまたもや目を奪われていた自分にハッと気付く。

(…………なんで?)


「……別にそんなつもりで来た訳じゃないって何となく気配で分かるから。
もしかして僕に会いに来たとか?」

「…そうだ、貴様に会いたくて此処へ来た」

「……え」

最後の一言はほんの冗談のつもりだったのに。思わず目を見開いて風間を見つめる。
……だって本当にそのつもりで来たって事…?

「何を驚いているのだ。貴様が言ったのだろう?」
ニヤリと口元を歪めた姿が妖しく見えた。

「……もし、僕が幹部の皆を呼んできたらどうするの?
流石に太刀打ち出来ないんじゃない?」

そう口にすると風間は緋の瞳を細める。

「貴様がそんな真似をするわけがないだろう、それに我は鬼だぞ見くびるな。」

(――…。)

…な……なに、それ。
僕の事を何でも知ってるような言い方しちゃって。
この間といい、この状況は何なんだ。


そしてふと、風間は沖田の方へと歩み始め近付く距離。

「……っな、」

目の前に来た風間が沖田の頬をそっと触れる。

「……やはり、貴様の瞳は我を惹き付ける綺麗な色をしている」

壊れ物でも扱うように優しく滑らせるその行為に抵抗する気になれず。

何故だか身体が硬直したように動かなくて、僕はただただ風間を見つめていた。この状況は池田屋のあの夜を思い出させる。


「……何、して…僕達敵同士でしょ。こんな事して平気な訳…?」

「……平気では、ないな。」

だんだんと指が降下して顎に添えられ、固定される。

「、だが」

……と思われたその手は突然後頭部に添えられてグイッと引き寄せられた。
互いの顔が近付き視界は風間の顔以外見えなくなる。

「ん………っ!?」

総司は吃驚して目を思い切り見開く。
これは……もしかしなくても、…接吻されている。

途端に背筋が寒くなる。
(駄目……感染ってしまう)

慌てて引き剥がそうと思ったが、強い力で肩を押さえ付けられていて身動きが出来なかった。

「ん、んう……!」


角度を変えながら舌を口内へと侵入して隅々まで口内を犯す。

クチュクチュと人気ない薄暗い庭に静かに響く。

口が塞がれ舌を絡めとられているから呼吸が上手く出来ず、鼻呼吸をするが鼻にかかった自分の変な声まで出て。
沖田は羞恥でいっぱいになり顔が赤くなるのを感じた。

「あ、……んん、ふ」

長かったようで短かった口付け。漸く離れ互いの口からはつ……と銀色の糸が伝う。

「はあ、は……」

ハアハアと息をととえながら接吻ですっかり力が抜けた身体は風間の胸の中に凭れかかる。

「互いに阻む壁に対して己の欲は関係ないだろう?」

「……っ」

―欲、だって?


男同士だというのに。
敵同士だというのに。
なのに何故嫌悪感が生まれないのだろう。


「…そろそろ戻らないと夜半とはいえ身体の調子を崩す。部屋に戻るぞ」

そう言ってひょいと風間よりも背の高い沖田の身体を抱き抱える。


なすがまま。

眠気がだんだんと訪れて瞼が降りそうになってきて昼間も誰かさんが言っていた似た台詞だな、と思考が定まらなくなる中ぼんやりと考えていた。





***


これ……風間視点も書かないと分かりずらいですね(汗)
室内にいる設定で書くつもりだったのでぬるい描写を付けたのに、書いてったら外で接吻しただけのお話になりました(あれ?)
まだ沖田さんは自分の気持ちに気付いてません。ぼんやりと見え隠れしてる状態な感じでしょうか。

てか、Aでちー様出てこないって書いてあったんですけど。
出てきましたね……そう書いたのを忘れてました(笑)

久々更新でした。

2012.3/4
(3/5日・加筆修正しました)


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