※原田→沖田→原田(視点)





気が付けば禁忌を犯し交わる身体と身体。
今更元に戻ることなど、出来ない。


「あ、あっ……ぁ」

何度も何度も抜き差しをし、突いて。
中に射精(はな)たれた秘所からはどろどろと引っきり無しに溢れ落ちる。


「お願……しま、も……」

カタカタと脚を震わせながら上気した顔で懇願するその姿は情欲を掻き立て、もっと自分の印を刻みたい衝動に駆られる。

何度も絶頂を迎えたせいか眼は虚ろで、自分をちゃんと見ているかどうかも怪しい。

今日はいつもより乱雑に抱いている気がする。

昼間。
授業が終わり、職員室に戻ろうと歩みを進めていた先で土方さんと沖田が何やら会話をしていた。

距離が距離なので会話の内容は聞こえなかったが、どうやら土方さんが沖田に対して心配をしているようだった。


(本当、昔から変わらねえよな……心配性な所はよ)

そこまではよかった。

よかったのだが。


土方さんが心配そうな顔を浮かべながら沖田の頭に手を置きわしゃわしゃと撫で。

沖田がそれに対して土方さんに止めて下さいよ…と困った顔ををしつつも嬉しそうにしているのを見て。


――ぴしゃり、と何かが弾けてしまった。


「……そんなに考えられる余裕があるならまだ、大丈夫だよな…?」

何処か上の空になっていた沖田に何かをぶつけるように。

「え…や、あっ……も、無理で…んぁっ」

ずるりと原田は沖田の中に入っていた自身のモノを抜くとその抜けた感覚が粟立つのか、沖田はふるっと身体を震わせた。

壁に向いていた身体を思いっきり此方に向け、互いに向かい合う形になる。

「あ……」

後頭部に手を添え引寄せてキスをする。

「ん、う…ふっう……んっ」

最初はたどたどしかった口付けも何度も何度も繰り返し教え込むうちに息継ぎの仕方も上手くなった。

「ん……は、はっ……ぁ」


(流石に……そろそろ止めとかねえと沖田が保たない、か)


などと思考を巡らせていると、とうとう限界が来たのか此方に虚ろな瞳を向けながら……ふらりと、身体を崩した。


「さの………さ……ん」

そう、呟きながら。
「……っ」

その一言にハッと原田は我に返る。
意識を無くした沖田を支えながら、顔を見つめる。


…―俺はいったい。

具合が悪かった事に気付かず嫉妬の渦に呑み込まれて無理矢理事に及ぶなど。

あの一言から歯止めが利かなくなった。

(教師という立場なのに最低極まりないな)

―我慢出来なくなった結果がこの有り様かよ。

「……………」

今の沖田をあの頃の総司と重ねて。


――何、してるんだ?


(―総司。)

浅い呼吸を繰り返す沖田の。
おでこに張り付いた前髪をさらりと指先でどかす。

…もう、あの頃のお前の面影を追って生きたりしないから。

今のお前を見るから。

いいじゃないか。
約束など覚えてなくとも、こうしてちゃんと逢うことが出来たんだ。


「……ごめんな」



***

熱い。
身体が何だかふわふわしている気がする。
気が付けば周囲は真っ白で何も見えず、訳が分からない沖田はただただその場を立ち尽くしていた。


(これは、夢?)


まるで独りきりで逝ったあの頃のようだ。
病に冒され何も出来なくなっていく自分を呪った。

(……あれ?なんで、今…)

こんな事を口走ったんだ……?


「――…」

(…?)

何かが聞こえる。……声?

ふと周囲を見回せば真っ白だった景色は薄れ、何やら何処かの家の室内が映し出された。

そこに居たのは栗色の髪の……


(……っ!?)

(…ぼ、く……!?)

ハッと息を飲む。

着ているのは、着物。
どうやら今の自分じゃないようだ、が。

(今の自分じゃない……?)

だけど驚くのはそれだけじゃなかった。
もう一人、傍らに居る人物。

赤い……髪の色。

……っは、

(原田、せんせ、い)


毎晩魘されたあの夢。
夢の事を話した時の原田先生のピリッとしたあの表情。

今の今までの出来事と合点がいくような気がした。
そして、屋上のあの出来事も気のせいじゃなかったのだと知る。

あの人物は……沖田総司。

――今の僕の前世の姿なんだ。

そして、あの赤い髪の人物は紛れもなく原田先生。


遠かった会話も段々とクリアに聞こえてくる。

「生まれ変わり……て信じる?」

「………総司」

「左之さんもし……生まれ変わる事が出来たなら。

その時は僕の事を見つけてくれたら、嬉しいな…なんてね、冗談……」

「約束するよ」

「……え?」

「俺がもし来世に生をうけたなら。
記憶あっても…なくても、絶対にお前を見つけ出してやるから」

「左之……さん」

「……うん、自分がもし生まれ変われたなら。其処で僕…左之さんの事待ってるから。」


――思い出した。


(何で、僕……忘れてたんだろう)

(左之……さん)


―――



あれから気を失った沖田の後処理をし、自宅に連れてベッドに寝かせた。

家に連れて来てから一時間程経つが、荒かった呼吸は少しばかり落ち着いたように見える。

瞼がピクリと動き、ゆっくりと上に上がる。目覚めたばかりでまだぼーっとしているようだ。

「………………」


「沖田、大丈夫か?」

「…………、」

返事は、ない。

「……悪かったな。具合が悪かった事に気付かなくて…本当すまかった」

「今日だけじゃなく今までの行為も…………本当、」
「……謝らないで下さい」

「おき……」

「謝るのは、僕の方だから」

そう言うと沖田は此方に瞳を向ける。

「…………」

「二人きりの時は………名前で呼んで下さい」

年齢にそぐわない落ち着いた話し方。
さっきまでと何かが違う雰囲気に原田は気付く。

「生まれ変わりの話を振ったのは僕からだったのに……約束、忘れてて、すみません…でした」

(な…………)

「お前……もしかし、て」

「……はい、左之さん」
「……っ」

ゆっくりと微笑んだ姿にどうしようもないくらいの狂おしい愛しさが込み上げて。

「今更遅せえかもしれないが……また…総司に逢えて、良かった」


「…やだなあ、左之さん……眼が潤んでますよ、もしかして泣いてるんですか?」

「………泣いてねえよ」

「…ふふ」

互いに手を重ね、絡め合う指と指。


現代では教師と生徒。
バレたら冗談では済まされない、互いの立場も危ういだろう。


だけど。

今の二人なら乗り越えられるような…大丈夫という確かな確証はないのに、そう思えた。

――もう二度と、離れない。

***

あびゃびゃびゃ……!!毎回恒例のグダグダ祭です(汗)

何とか……後編終わりました。

沖田さんの記憶を思い出させないままシリアスに終わらそうかな、て思ったんですけど。
どうしても幸せにしてあげたくなり(´∀`)

こういう展開に持っていきました。
無理矢理感否めないですが;;

原田さんが決心した後に沖田さんが思い出すという…やっと決心したのに(^ω^;)でも……ま、いっか!

とりあえずは其れが〜からの深く〜話はこれで完結です。
時間ある時にでもちょこちょこ加筆修正しに来ます。

お読み頂き有り難うございました(^o^)/

2012.8/2.

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