在るお屋敷の一角、陽の辺りの良い庭の片隅


「……………」

「ふん、ふん、ふふーん!」


まどろむ視界で紫苑を見た、ヒノエの好きな望美の髪の色を


「よし、順調順調!」


綺麗な白い花で丸を作る

時折微妙に歪んだ形になるけれど、それでも何とか原型を留める

綺麗に出来た方が良いのかも知れないけれど、

今の私にはこれが精一杯だから


「起きる前に終わらせないと……」


膝の上に頭を預けたまま眠っている人の顔を覗き込みながら

動かす手は止めない


「うーん、やっぱり……難しいな…」
「何がだい?」

「ヒ、ノエ…くん…!」

「ん?」


吃驚して声の主を見て、下から聞こえた声に問う


「何時から起きてたの?」

「今起きたところ、かな?」

「……………」


疑いの眼差しで見つめてくる望美


「本当だよ、今起きたところ」

「そっか。」

「ところで望美は、何をしてたんだい?」


納得してくれた様で、望美はヒノエに返した。

気になることが一つ


「これ?」

「それはなに?」

「待ってて、もう直ぐで出来るから」

「分かった」


綺麗な白い花のわっか

気になっていたモノを問うヒノエに、望美は待ったをかけた

望美は手に持っていた花の輪に、白い花を編んでいく

白い花が綺麗な丸になった頃、ヒノエも自分の身体を起こした


「出来たよ、ヒノエ君」

「これは?」

「シロツメクサの首飾り! 花冠でも良かったんだけど、ヒノエ君と二人ならこっちが良いかな?って。」


ジャジャーンと言う効果音が付きそうな勢いで、望美はヒノエの前に掲げて見せた

白い花が陽の光を受けて淡く光る


「綺麗だね」

「でしょう?」

「はい、ヒノエ君も一緒に入ろう!」
「それでは、姫君のお言葉のままに」


綺麗に輝く花が、二人の首に通される

首に当たるシロツメクサと微かに香る花の匂い


「うん、丁度良いね!」

「望美と俺だけの世界だね」

「そうだね」


ヒノエの言葉にほんのりと頬を染めるの望美

それでも、ちゃんと返してくれる望美に愛しさが募る


「もう一つお願い、良いかな望美?」

「ご注文をどうぞ、ヒノエ君」


同じシロツメクサのわっかの中で笑い合いながら

同じ時を刻み、生きてゆくと誓った

「もう一度膝枕を、してもらいたいね」

「それで良いの?」


「余りしてもらった事が無いからね、こう言う時に言わないと……してもらえないだろ?」

「うん、分かった。」

「望美の膝は心地が良いね。」
「はいはい」

にこやかに笑ってヒノエの言葉を流していく望美にちょっとムスッとする、何時もなら、…いや、ここ最近は無くなったかな頬を染めてくれたのに、と。

「つれないよ望美」

「随分慣れちゃったんだ!」

えへへと笑う望美が可愛い、こっちの方が照れてしまいそうで。差し出される望美の膝にヒノエが寝転がる

「望美」

「ん?」

そっと、望美の顔を見上げ手を伸ばした。自分の手に触れる望美の頬

「好きだよ、望美」

そんな事を言われるとは思っていなかったであろう望美は、目を大きく見開いた。先ほどの意趣返しで望美に言ったのだけれど……

「私も好きだよ、ヒノエ君」

やっぱり姫君には叶わないね

貴方を想い、白い花を結んだ

花の輪の中の世界で、一つ一つ溢れる想いその想いの数だけ、愛を告げましょう

(シロツメクサの花の輪に、これからの幸せを……)




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