―ねえ、もっと満たしてよ。
快楽で寂しさなんて霞んでしまうくらい、奥深くまで。
「ふあ、あ……ぁ!」
自身の中に濡れそぼった相手のモノが入り込み、動く度にグチュグチュと粘膜質な音が響きわたる。
「あ、あ……ぁ、もっと突い…っ」
そういう行為の最中は何もかも忘れて快楽に身を追える事が出来るから好きだ。
"淫乱"
行為をする度に言われる一言。
―そう言われても仕方ないのかもしれない、実際好きなのだから。
何を言われても寂しさを埋められるなら別に…構わない。
(そう、構わないんだ…。)
行為が終わった後は今まで忘れる事が出来ていたその寂しさも一気に波のように押し寄せる。
そしてまた誰かに自分の身を委ねるのだ。寂しさを埋めてくれるなら相手は誰だっていい。
―なのに。
(満たされない、空虚)
どうしたら満たされるんだろう?
誰か、誰か、もっと――
***
壬生寺で何もかもを振り払う様に素振りをする。
無心に、ただ無心に。
どれくらい木刀を降り続けていたのか。
夕餉の後から始めて気が付けば夜半になる少し前くらいのようだ。
はあ、と息を吐くとカランと地面に木刀を落とす。
その場に汗を拭う事もなくどさりと座り込み、そして寝っ転がる。
地面のひやりとした感覚が心地よい。
あまりにも心地よいのでそのまま目を瞑る。
(あ、このまま眠れそう)
そのまま押し寄せてきた疲労と眠気に誘われるまま、すうっと意識が遠退いた。
暫くした頃。
「――……た、きたってば!」
―遠くで声が聞こえるのに気が付いた。
そのまま無視してみたがずっと呼び続けててきりがないので、仕方なく相手を確認するべく目を開ける。
「……ん、」
「……………………」
(紺色の、髪……)
「………何、井吹くん。
何で君がこんな時間にこんな所にいるわけ?
……ああ、もしかして芹沢さんに島原に連れ出されたけど途中で帰れって追い出されたとか」
「…………」
何も言わない所をみるとどうやら図星らしい。
「…こんな時間に外で寝てると身体を壊すだろ、いくら夏の時期とはいえ夜は結構冷えるぞ」
もっと自分の身体を労えよと身体を起こそうと手を伸ばしてきた。
「大きな、お世話…なんだけど」
―君なら、どうなんだろうか。
ふとそんな考えが浮かぶ。
伸ばされた手を、掴む。
上半身を起こされた所でぐいっと井吹くんの手を引っ張る。
「う、わわわ…!」
僕に引っ張られたのが予想外だったのかどさっと僕の上に倒れ込む。
辛うじて掴まれてない方の手で地面を付いたので自分の上に乗った状態ではなく。
……そう、押し倒されたような格好になった。
井吹くんの耳元に自分の口を寄せ、囁く。
「ねえ、汗をかいてから暫く外に居たから身体が冷えちゃったんだけど…だから温めてよ、井吹くんの身体で」
「…………っ」
――そう。
その時はそんな考えだけの軽いものだった。
***
――芹沢さんに会津藩から暗殺の命が下った。
芹沢さんが居なくなれば君の存在も危ういだろう。
軽い気持ちから言ったあの一言で始まった二人の関係。
色んな人に抱かれる事で埋めていた寂しさが君だけで何故だか満たされたような気がしたんだ。答えは分からない。
―だけど―
水面に浮かぶ寄り添うように並んでいた蓮の花はゆらりと風に誘われるまま、離れた。
…再び寄り添うことはなく。
(―ごめんね。)
千駄ヶ谷の植木屋。
病床につきながら外の景色を眺め、そう呟きながら眠気に誘われるまま目を閉じる。
一筋の涙が零れ頬を伝いそして、落ちた。
***
かなり短めなお話なんですが。
これは蓮華(れんげ)って通常は読むんですが、今回は"れんか"でお願いします^-^
このお話はゆきさくらにて発行する龍沖本の内容をこんな感じです程度にざっくりかいた文でもあります。
こんなお話です!
幕末(シリアス)→SSL(シリアス→甘)の転生話になる予定です。
長くなりそうなので幕末でのお話とSSL話は本は分かれてしまうのですが(上下)
シリアス大好きですんませんvvちなみにどちらもR18です^∇^
ゆきさくらで上、来年のCITY東京で下を発行出来たらなあと奮闘中です^^
2012.10/8