ゴリラさんにご挨拶(いち)



「とりあえず、幹部隊士の人達には挨拶しておこうか」


山崎はそう言って涼子の手を引いた。向かう先は、真選組各隊隊長の元。


もし屯所の中で何かがあった時、隊長格の人間とちゃんと面識がある方が涼子的にもやりやすいだろうと、山崎が考えたのだ。



「じゃあまずは、局長の近藤さんの所に行こうか」

「キョクチョーノコンドーサン?」

「うん、近藤さん」



言い聞かせるようにそう言うと、山崎はキョトンとしていた涼子の手を引いて歩き出した。
キョクチョーノ…と繰り返す涼子に山崎は微笑む。

辿り着いた部屋の前。そこで山崎は咳ばらいをしてから声を上げた。


「失礼します、局長。居ますか?」

「しつれいします!」


山崎に次いで、涼子も声を上げる。すると襖が開いて、中から近藤が顔を出した。



「おぉ、どうした?」

「もう一度ちゃんと挨拶をしようと思いまして」

「そうかそうか。 じゃあ俺からも改めて…、涼子ちゃん、よろしくな」


涼子の目線まで屈み、近藤は手を差し出した。

差し出された大きな手の人差し指をきゅっと握る。にこりと笑って、涼子は頭を下げた。




「よろしくおねがいします、キョクチョーノコンドーサン!」

「ははは、『近藤さん』だけでイイぞ。『局長の』は名前じゃ無いからなぁ」

「キョクチョーノコンドーサン?」

「『近藤さん』。 はい、言ってごらん」

「コンドウサン!」

「よーし、涼子ちゃんはいい子だなぁ」



握手をした手をそのままに、元気よく応えた涼子の頭をがしがしと力いっぱい撫で回す。近藤の手荒な可愛がり方に、涼子はきゃあきゃあ笑いながら楽しんだ。



「…近藤さん、この後は他の幹部隊士の所にも挨拶回りしなくちゃいけないので、そろそろ涼子を開放してくれませんか?」

「え? ああ、悪いな。 じゃあな、涼子ちゃん。何かあったら近藤さんを呼ぶんだぞー?」

「はーい!」

「おっと、返事は伸ばしたらダメだ」


「はい!」

「よし!」



ゴリラさんにご挨拶。





(じゃあ次は、副長の土方さんね)

(フクチョーノヒジカタサン?)

(…副長の、は名前じゃないよ)


(フクチョ?)


それでも山崎は涼子が大好きです。

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