ニャンコと友達!(に)



にゃあ、と部屋の戸を開けた瞬間に中に居た猫が鳴いた。

その様子に、涼子はきらきらと目を輝かせる。



「にゃんこーー!」


そんな涼子の声に猫はピクリと身を強張らせ、開いていた戸から逃げ出した。
あ、と短く声を漏らし落ち込む涼子を床に下ろしながら、涼子の行動に伊東が目を細める。


「涼子ちゃんは猫が好きなんだね」

「う? んっとねー、ネコさんとね、イヌさんとね、うさぎさんとね、いろいろすきっ」

「ああ、動物が好きなんだ」

「うん!」


にこにこと笑う涼子に引き込まれ、伊東は涼子の柔らかい髪の毛を撫でた。
それを嬉しく思った涼子はまた笑う。

えへへ、と口に出すと、そんな涼子の足元を猫が通り過ぎた。


「あっ──むぐっ」


目当てのモノが近付いた事に、涼子は一瞬声を上げる。
しかしそれは、伊東の手によって止められた。
キョトンと目を丸くした涼子は、伊東の顔を見上げる。


「涼子ちゃん、あんまり大きな声を出してはいけないよ。猫がびっくりするからね」

「んむ、びっくり? そっか…ごめんね、ネコさん」




しゃがみ込んで、近寄った猫の背を撫でる。
猫はそんな涼子の手に頭を擦り付けるように寄ると、ごろごろと喉を鳴らした。


「にゃんこ、にゃんにゃーっ」

「みゃあ」

「わ、にゃんこないたっ。 にゃんにゃんにゃー」



にゃーにゃー繰り返す涼子は、畳に腰を下ろして猫を膝に乗せようと誘導した。
しかし思うように来ない猫に、涼子は座ったまま前屈で畳に頭を付けて、猫の顔を下から覗く。


「みゃあ」

「にゃんにゃー、にゃー? ひぁっ」



体制を低く取った涼子の背に、突然猫が飛び乗った。意外と重い猫に驚き、涼子は身を固める。
次の瞬間に、猫はそこから跳びはねて伊東の腕の中へと納まった。



「んむー……」

「ふふっ、遊ばれてしまったね。」

「むー…イトーサン、あしたもきていい?」

「ああ、暇ならいつでもおいで。 僕が居なくても猫は居るからね」



伊東のそう言った言葉に、抱かれた猫が一声鳴く。

そんな二人に、いや一人と一匹に、涼子は満面の笑みでありがとう!と声を上げた。




ニャンコと友達!


(みゃあぁぁッ)

(うあ、ネコさんにげたぁっ)

(…涼子ちゃんの御礼に驚いたみたいだね)

(にゃんこぉ……)




猫と友達?
なれるかわかんないな!


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