何がなくとも(いち)


単刀直入に訊く。

そう言い切ったのは、少し前に出会った坂田銀時という男。
俺こと、永倉新八は、そんな坂田さんの質問に疑問の念しか抱けずに顔をしかめた。


「あー、そんな仏頂面すんなよ。まだ本題は言ってないだろ」

「じゃあ早く本題言いなヨ」

「……お前、ホントに俺の事嫌いな、ってそれはまあいい。 本題なんだが、単刀直入に言って、お前と小百合、どこまで行ってんだ?」



「……、はあ?」


思わず全力で聞き返す俺。
坂田さんはそんな俺に、だからぁ、と同じ事を繰り返そうと口を開いた。
それを、そうじゃなくて、と制止して、俺はゆっくり頭(かぶり)を振る。


どこまで行ったかという質問の真意が見えない訳じゃない。
男女の関係がどこまで進んでいるのかという事ぐらい、容易に想像がつく。
しかしそれをどう答えるべきか思い悩み、俺は眉をひそめて坂田さんを見た。



「随分と不躾けな質問だネ」

「まぁ、そう言われるのは想定内だ。 でも俺としちゃ、いかにお前から小百合を奪えるかが問題な訳。 わかる?」

「…わかりたくないナー…。てか、俺は小百合と別れる気なんかないから。坂田さんの行動は無意味だヨ」



にっこり笑って言ってやれば、坂田さんも口角を上げて笑んだ。
そしてお互いに笑顔で睨み合う。

まったく、何でこの男は容赦なく小百合に突っ込むんだろうか。


小百合も小百合で、拒まないのだから質が悪い。
俺の恋仲としての威厳は?と訊ねたくなる訳だが、それでも小百合は俺を一番に想っていると解るからそれだけで満足なんだけど。


「小百合にも聞いたんだよ、おんなじ質問」

「は、はぁ? …小百合は何て答えたノ」


訊ね返せば、坂田さんは思い出し笑いを浮かべ


「清水寺だとよ」



そう、言った。




「清水寺?」

「おぉ」

「……ああ、確かに二人で行ったトコで一番遠いのは清水の舞台カモ」



清水寺だと答える小百合を想像すると何だか微笑ましくて、俺は思わず口元を押さえて笑った。
しかし腑に落ちないらしい坂田さんは、口をへの字に曲げて俺の向かい側のソファーに身体を投げ出した。
寝る、とぶっきらぼうに言い放ち、そのまま色とりどりの読本(ジャンプと言う名らしい)を顔に乗せる。


まあ、気にするまでもなく、拗ねているのだろう。


「坂田さん、大人げないネー」

「るせぇ」



そのまま放置すると、定期的な吐息が聞こえてきた。
どうやら本当に寝てしまったらしい。

まったくもう、と息を吐けば、玄関の開く音がした。聞こえる音からすると、どうやら小百合と神楽ちゃんが帰ってきたんだろう。

俺は寝てると思われる坂田さんを起こさぬように席を立ち、外へと繋がる戸を開けた。


「新ちゃんっ、ただい、…んむっ?」

「小百合、シーッ。あの人相手するの面倒だからサ、小百合静かにしてて」


ぱっと笑う愛しい彼女の唇を手の平で塞ぎ、俺はにこりと笑んだ。
それを見た神楽ちゃんは苦笑いを浮かべる。



「小百合のトコの新八は、銀ちゃんの事大嫌いアルナ」

「恋敵だからネ」

「…その笑顔が怖いアル」



ああ、怖くてもイイんだ。
だってこんな可愛い恋人を、可愛い可愛い小百合を坂田さんなんかに、渡したくないカラ。







(新ちゃん、ぎゅうってしてあげる!)

(あはは、アリガト)


(もう、こいつらバカップル過ぎてお腹いっぱいアル…行くヨ定春ー)

(ワンッ)

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