本音と建前がうまいだけ
私は會津藩に言い渡されて、この新撰組に身を置いている。
『女中としての仕事のみを熟す』
『余計な詮索はしない』
その二つを条件として飲んだ上でここにいるのだけど、別に密偵だとか間者だとかになったつもりはないのに疑って掛かられると逆に憤りを感じてしまう。
誰だよそんなこと言い出したの。
父親が役人というだけのただの町娘を捕まえて間者扱いとかほんと何なんだよ。私をなんだと思ってんだよ、ただの町娘だよ…っ!
父の上司である役人さんに連れられてくぐった大きな門。
くぐった先で通されたのはなかなか広い部屋だった。
少し待たされた後にやってきたのは、明るい髪色に眼帯をしているド派手な局長の近藤さんと、黒髪で顔に傷のあるちょっと…いや結構恐い副長の土方さんだった。
「フミ君、よろしく頼みますぞ」
そう言ったのは局長さんだ。
よろしくってなんだ。
何をよろしくすれば良いんだ。
でも女中として働くことになったのは逃れられない事実なのだから、私はここで頑張らなくちゃいけないわけで、あぁもう面倒くさいなぁ!
色々な気持ちを飲み込んで腹に納めた私は、柔らかく微笑んで頭を下げた。
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