四方山話に花が咲き
(いち)
私が新撰組に奉公に来てから、少し日が経った。
仕事にも少し慣れてきて、周りの人と他愛のない会話を何となく出来るくらいにはなってきたと思う。
「サチちゃん、掃除終わった?」
「はっ、し、島田さん! す、すみません、掃除は、はい、終わってます!」
「…終わってるなら、休憩しようか。お汁粉が作ってあるんだけど、食べるかい?」
「お、お汁粉…!お言葉に甘えて、頂きます」
仕事にも慣れてきて…とは言ったものの、私の性格上、打ち解けるのは時間がかかるようだ。
この新撰組は背の高い方が多く、そうでなくても緊張しいな私にはいささかながら酷だった。
背が高い方と会話をするのは、ちょっと…こわい。
それは間違いなく、私の背が人並み以下だからである。
山崎さんなら平気なのに…。
「うーん、もうちょっと楽にしてくれていいんだよ?」
「えっ、あ、すみません。 ら、楽に、…はい、楽に…」
「考え込む時点で、全く楽じゃないんだけど…。 うーん、サチちゃん、このあとは買い物に行ってきてもらっていいかな」
「だっ、大丈夫です!行ってきます!」
「うん、お汁粉食べてからで良いから落ち着こうか」
台所を任されている島田魁さんとは、何かと言葉を交わす機会が多いのだけれど、その島田さんの隣に立つと身長差が顕著に出て気が張るのだ。
「すみません…」と頭(こうべ)を垂れれば、島田さんは「大丈夫、とりあえず休憩しよう。な。」と言ってくれた。
立ち上がった私を制してもう一度座るように促した島田さんは、お汁粉と一緒にお茶を用意してくれた。
お代わりもあるからね、と笑う島田さんに、思わず感動してしまう。
(なんてお優しい…!)
甘い甘いお汁粉と、ちょっと濃いめのお茶が絶妙な組み合わせである。
「美味しいかい?」
「はい、とても! お汁粉もお茶も、どちらも最高です」
「はは、良かったよ。 これを食べられるのは、沖田さんぐらいだからね」
たくさんお食べ、と言った島田さんに、私は元気よく返事をした。
元気に返事をしてから、ハッとして赤面する。
「す、すみません…私ったらはしたない…!」
「いいんだよ、それくらい。 むしろ、打ち解けてくれたかなって、ちょっと嬉しかったしな」
「…! そ、そうです、か」
幸せそうに笑った島田さんの姿に釣られるように、私も顔が緩んだ。
少しは打ち解けられたかな。
そんな昼八つ過ぎの休息の話。
To be continued.
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