言葉遊びでお願いします
(永倉新八さん)
ねぇ新ちゃん、私の事、好き?
そう訊ねるのが怖くて、ただただ怖くて、私は毎日会いに行くだけで精一杯だった。
翻る青。
壬生浪士組の浅葱のダンダラ模様。
それに身を包む、小さな彼。
お仕事仲間の左之君や平助ちゃんと並ぶと、新ちゃんが小さいのは一目瞭然だった。そんな彼と並ぶと私の方が小さいのだから、私もなかなか小さい人間なんだろうけども。
小さいけれど、新ちゃんは強くて素敵な人だった。
いつしか浪士組は新選組と名前を変えて、しかし京都の人から怖がられているのは変わらなかった。
あと、私が新ちゃんを好きなのも変わらなかった。
私をスキかどうか。
彼の意見は聞いた事はない。
伝えるのは怖い。
でも私は新ちゃんが好きだ。
好きだ。
好き、好き。
「……し、…っ、…新ちゃん!」
「ぅおわぁっ?! うわービックリしたー…」
私は新ちゃんの袖を勢いよく掴み叫んだ。
「す、すすす…っ、す」
「…す?」
「すす、す、す…ぅぅうっ」
あーだめだ恥ずかしい!
でもでも、これで逃げても恥ずかしいし!
ぎゅうぅ、と袖を掴んだまま、私は顔を俯かせる。
すると新ちゃんは困ったように声を上げた。
「んー…、…簀巻きでも食べたいノ?」
「みゃっ、簀巻き!簀巻き美味しいよね、食べたいなー…って、…違うの簀巻きじゃないのっ、す、す…っ」
思わず食べ物の名前に釣られた自分に嫌悪感を覚えながら、私はブンブンと首を横に振る。
(えぇと、えっと、んと…)
「す、すまきのマヌケ!」
私は顔を真っ赤にしてそう叫び、キョトンとした新ちゃんにぎゅうっと抱き着いた。
言葉遊びでお願いします(すまきの、まぬけ? あぁ、つまり俺の事が好きって事か)
(そ、そう…デス。)
(なーんだ。そんなの知ってたよ)
(うにゃ?!なななな、なっなんでぇ!)
(いつも、目が語ってたヨ。好きだって。)
[ 23/23 ][*prev] [next#]
[back]