可愛い猫には敵わない
(藤堂平助さん)
俺の恋人、なまえは『猫』である。
あれ?あー、違う違う。
『猫みたい』である。
竹刀を振るその姿は凛々しくて、可愛いよりも恰好良いというのがピッタリだ。
しかし、好物だという母親特製のあまり甘くない牡丹餅を食べる姿は可愛くて、なんだか子供っぽい。
実は俺の方が一つ年下なのだが、そんな俺から見ても、牡丹餅を頬張るなまえからは幼さを感じるのだ。ああ、なんて可愛らしい。
…可愛らしい。
そう、可愛らしいのだ。
好きだと耳元で囁いた時に見せる、羞恥に赤らむその顔も。こちらが釣れない態度を取った時の、少ししょぼくれた顔も。
全てが可愛くて可愛くて可愛いのだ。
それはまるで、猫のように!
(愛らしくてならない!)
「……平助、何ニヤニヤしてるのよ気持ち悪い」
「え? あれ、ゴメン。考え事してた」
「…そう。考え事というより、猥雑とした妄想なんじゃないかしら」
そう言ったなまえは酷く腹黒い笑みを浮かべ、否定も肯定もせずに黙り込んだ俺に竹刀を振り下ろした。
パァンと小気味よい音が脳天を突き抜ける。
「その変態性欲を、もっと新選組の為に使ったら?」
「いや、使ってるって」
「『もっと』って言ってんでしょうが」
もう一度竹刀が振り上げられる。
そうは行かぬと頭を防御すると、鼻で笑われ足首を打ち抜かれた。
「甘いわね、変態。あ、間違えた平助。」
「…ワザとだよねそれ」
「あら、そんな事ないわよ変態」
「今度は言い直しすらしないの?!」
声を荒げた俺に向かって笑うなまえに釣られるように、俺は頬を緩める。
目の前の猫は、いつもながら可愛かった。
可愛い猫には敵わない(なまえ大好き!)
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