散らない桜(永倉新八さん)






もうすぐ春だネー。

そう言って笑ったのは、私の恋人である新ちゃん。
見上げるのは、校庭の隅に一列に並んだ桜の樹の先。
紅色の、桜の蕾。


「新ちゃん、新ちゃん。」

「ん、なぁに?」

「春はさ、終わりと始まりの季節だよね。」

「うん、そうだネ。」

「私達、もうすぐ三年生だよ。」

「うんうん、それでどうしたノ?」



二人繋いだ手を離さずに、樹を見上げたまま言葉のキャッチボール。
他人から見たらまるで噛み合っていない様だけど、それでも私と新ちゃんの間にはちゃんとした繋がる言葉の波長。

その幸せな時を噛み締める。



「来年は同じクラスになれるとイイね」



そう言って、私は新ちゃんの方を向いた。新ちゃんも、ほぼ同時に私を見る。



「同じクラスでも違うクラスでも、なまえは新ちゃんのトコに通うけど……。まぁ、なにはともあれ、来年度もよろしく、新ちゃん。」


微笑みかけてそう言えば、新ちゃんもよろしくと言って笑った。




散らない桜

(来年度だけじゃなくて、ずーっとずーっと、よろしくね)




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