気になるのは完璧さ故?(斎藤一さん)




「有難う…ございました」


ズル、と蕎麦を啜る斎藤先生に頭を下げながら、私はそう呟いた。
斎藤先生と出会ってからまだ一日しか経っていないが、この人はとても優しい人なのだと肌で感じられる。

親を辻斬りに殺されて、独りになった私。ただただ腐敗していくのみの母様の体と共に、私も飢え死ぬのだと、そう思っていた。

そんな私を助けてくれたのが、斎藤先生だ。

それだけ聞くと、なんだか正義の味方みたいに思える。でも、私にとっては本当に、本物の、英雄なのだ。


「…なまえ…何の感謝だ?」

「斎藤先生は、私の命の恩人ですから」

「ほぅ。」


なんやなまえちゃん、御礼のモン探しとるん?斎藤さんに御礼すんねやったら、やっぱりこれやな!
…と、賄い方の歩さんがやたら陽気に持たせてくれたお蕎麦は、どうやら正解だったらしい。
それを啜る斎藤先生は、凄く嬉しそうだもの。

にこりと笑えば、斎藤先生は小さく頷いて、そして私の頭を撫でた。


「少しだけ、元気を取り戻したみたいだな」

「……え、…あ、有難うございます」



淡く微笑んだ斎藤先生に、私は尻窄まりに感謝を呟く。

顔が熱くなるのが解った。
照れ、る。

何だろう、なんで、照れてるんだろう。




気になるのは完璧さ故?


(分かんない。でも斎藤先生が気になって気になって仕方ないのは、事実。)


 


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