君は他の男に忠誠を誓う
(沖田惣次郎さん)
彼女は試衛館の側にある道場の娘で、よく試衛館に遊びに来ていた。
数日に一度試衛館に来ては、私たちと同じような稽古を熟していく。
「近藤さん、土方さん、こんにちはー!」
「おぉ、なまえちゃんは今日も元気だなぁ」
「元気だなぁって……。勝っちゃん、こいつはそれしか取り柄はねぇよ」
「えぇー、土方さん酷いですよっ。私だって落ち込んだりしますよ、ただ落ち込む暇が勿体ないだけです!」
「だから元気が取り柄なんだろ」
「全くだな、トシの言う通りだ!」
土方さんの言葉に、近藤さんがそう言って笑う。
彼女もそれに釣られて笑みを零した。
試衛館に来たら、まずは近藤さん達に挨拶。そしてその後に向かうのは決まって平助さんの所。
ぱたぱたと、私の横を駆けていく。
擦れ違い際に一言、「惣次郎、こんにちは!」と掛けられる言葉が嬉しい。
けれどそこから発展を見せる事のないこの状況は、悲しい事この上ない。
「平助ー、こんにちは」
「わぁ、なまえ久し振り!てか一昨日振り!」
会いたかったと声を上げて彼女の手を取る。それを嫌がるそぶりもなく受け入れ、彼女はにこやかに平助さんの頭を撫でた。
私も会いたかったとは、彼女は言わない。しかしその指先は、彼の好意を、そして行為を受け入れている。
結局、二人の仲を引き裂くなんて、私には出来ないのだ。
君は他の男に忠誠を誓う(私の方が、長い付き合いなのに。)
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