夏は君に来たる(伊東鴨太郎さん)





「……だらし無いぞ、なまえ」

「…いとーひゃんらって、だらしないれふぅ……」


アイスキャンディーをくわえたままごろんと寝返りを打って、私は仰向けになる。横を見れば、私と同じく畳に寝転ぶ伊東さん。
だらしがないのはお互い様だ。



「やっへこんはにあふいんれふお、だらしらくあっていいやらいれふかぁ」

「何を言っているかわからないな。」

「……だって、こんなに暑いんですよ。だらし無くたっていいじゃないですか。」


わからないと言われたのにカチンときて、私はくわえていたアイスを出してきっちりと言い直してやった。
そんな私の言葉にそうかと息を吐いて、伊東さんは体をこちらに向けた。その顔は何やら不機嫌というか、なんというか。


(気を悪くさせたかな)

そう思って伊東さんに顔を向けて見つめると、伊東さんは右を横にして微かに体を丸め、そっと私に手を伸ばした。



「ん、うぅ?」


何をしたいのか解らずに身を固めると、伊東さんは薄く微笑んで私のくわえていたアイスの棒に触れて

「…む…んあぁっ。」



すぽんと抜いてしまった。

知覚過敏でアイスが噛めなかった私は成す術もなく、ただ盗られたアイスを手と目で追うしかない。
伊東さんはそのアイスをくわえて起き上がった。


「伊東さん、返してください。」

「聞こえないな」

「いとーさんっ、意地悪しないでくださいっ」



転がったまま手を振るが、もちろんアイスを掠める事は出来ない。私は起き上がって伊東さんに近付く。

瞬間、伊東さんは残りのアイスを全て食べてしまった。
しゃく、とアイスの咀嚼音が耳に届く。

(私のアイス……!!)

ショックで声が出せずにいると、伊東さんが私の名を呼んだ。当然私はじとっと睨むように伊東さんを見る。


けれど私の表情は、彼の次の言葉に一変した。


「こんなアイスも良いが、明日にでもかき氷を食べに行かないかい?その方が夏らしいだろ」





夏は君に来たる


(ぜひぜひ、ご一緒させていただきます!)

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