不透明で、不確かで(いち)



高杉の、否、高杉が率いる鬼兵隊の居場所を、知っているか。

投げ掛けられた質問を答える術を、俺は持ち合わせていない訳ではなかった。
進む方向が違くとも、俺と高杉は同じく『攘夷志士』という括りに入る。

人一倍動きの大きな鬼兵隊。
把握は出来なくとも、察知するのは可能だった。




鬼兵隊は今、とある天人と行動を共にしているらしい。

猫のような見た目の天人だ。
その会合には、鬼兵隊に属していない地球人も同行している。

黒い服に身を包んだ黒い肌の青年を筆頭に、小さな子供二人と大男が一人。
それから、多数の黒猫。

最近では、高杉と青年が二人で会う事が多いらしい。


彼らの目的はわからない。

けれど、何か不穏な動きを見せているのは確かだった。





「…で、そんな高杉と小百合殿が、どう関係があるんだ?」

質問に答えきらずに、逆に問い掛ける。
すると銀時は、眉間のシワを濃くして額に手を宛がって「ちょっと待ってくんない?」と声をあげた。


「その青年っつーのは鈴で間違いねぇけど…その後ろに天人とか…、想像以上だわ…」

「ねぇ銀ちゃん、このままじゃ小百合の身が危ないネ。鬼兵隊だけでも、小百合一人にするの可哀想なのに、それ以外にも居たら、小百合泣いちゃうヨ」

「それにしても、何がしたいのかわからないのは痛手ですね。何か対策が練られたら良いんだけど…」

「っていうか、結局、その『高杉』の居場所はわかってるの? 『桂』って名前聞いて攘夷志士だろうなと踏んではみたけど、なんか曖昧すぎるんだけど」

「わんわん!」


銘々に好き勝手言い始める万事屋の面々。
その中に、見知らぬ男が混じっている事に気が付いた。

背の小さなその男は、誰よりも辛辣な言葉を吐いているように思える。
見ていれば、ふと視線がかち合った。
刹那、敵意のようなものを感じる。


「…随分と不躾だな、そこの小さいの」

「え?あぁ、ごめん。小百合と『でぇと』したとか何とか抜かすから、完全に敵視してた。
で、結局あんたは高杉って奴の居場所を知ってるの?知らないの?」

「ちっちゃい新八は小百合の事になると本当に恐いアルな…」


詰め寄る男の後ろで、リーダーがそう独りごちた。
それに対して、新八君が「こちらの永倉新八さんは、小百合さんの恋人なんです」と説明をしてくれる。

えっ、恋人?
瞠目した俺に、永倉という男は「どうも」と短く言ってのけた。



「え、聞いてないぞそんな話!」

「知るかよお前の事情なんか。つーかヅラ、人妻が好きなんだろ、小百合は範囲外なんじゃねぇの?」

「ヅラじゃない、桂だ。 小百合殿に関しては全く関係ないな、それよりも他人の物と思った方が俄然燃えて…あいた!何をする、痛いではないか!」

「他人の女を物扱いするとか、何様な訳?それともこっちの世界ではそれが世の常なの?」

「世の常な訳ねぇだろ、永倉もっとやっちまえ」

「痛い!」


銀時の言葉に、永倉は丸めた新聞で再度俺の頭を叩いた。
ぱしーん!と小気味好い音が己の頭から発せられ、あわせて視界が大きく揺れる。

「それで?高杉の居場所は知ってるの?」

「うむ…、細かい場所などは流石に解りかねるが、概ねの居所に見当をつける事は可能だ」



そう言った俺の言葉に、皆が皆身構えた。
拐われた彼女を救いたいという気持ちは、万事屋一同永倉含めて同じなのだろう。

ならば俺は、それを手伝うのみだ。



「俺が知りうる限りの情報、教えようではないか」


不透明で、不確かな情報ではあるが、それに全てをかける。

小百合殿が、無事であるように。
そして願わくは、エリザベスを交えた三人でまた会えるように。


To be continued.


弔辞様よりお題お借りしました。

[ 98/129 ]

[*prev] [next#]
[back]

[TOP]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -