私の始まりの詩(に)


壬生浪士組。
実はよくは知らないのだけれど、京都を我が物顔で闊歩してるとか、無情な人斬りだとか色々と評判の良くない人達だ。

家を燃やされたとか、強請られたなんて話も聞いたことがある。

そんな人に、抱き着いたり盾になってもらったりしたのか、私は。


「ごっ、ごめんなさい!!」

とりあえず謝ろう。
そう思って、思い切り頭を下げる。

その時に、帯刀してあった刀が目に入った。


(ま、まさか斬られたりしないよね……。)



恐る恐る顔を上げたら、お兄さんは物凄く楽しそうに笑っていた。
いや、笑いを堪(こら)えていた。


「な、なんで笑うの…っ。小百合、あ…謝ってるのに!」

「…ぷっ…ふはッ! ご、ごめっ、だって、あまりにも必死で、はははは!」


「もーっ、なんで笑うのー!」


頬を膨らませ、私はぽかぽかと彼の胸を叩いた。
ごめんごめんという優しい声の後に、これまた優しい手の平が、私の頭を撫でる。


(むぅーっ!子供扱いだよね、絶対に!)



そう思い、ますます頬が膨らむ。
しかし彼の撫でる手は止まらない。

……ちょっと、心地良いカモ。


気が緩み、口角が自然と上がって笑みが零れた。


「ははっ、やっと笑ったネ」

「うあ…だって、浪士組って言うから、小百合どうしようかと……」


尻窄まりに呟けば、彼は困り顔でごめんネと手を合わせた。怖がらせた事を詫びてくれているのだろうか。
だとしたら、この人は。


(いい人、だ!)



「ところでお姉さん、名前は小百合で合ってるかナ」

「うん、って…あれ? なんで私の名前知ってるの? 教えてない、よね」

「さっき自分の事『小百合』って呼んだから、そうなのかナーって思ったんだけど…、当たって良かったヨ」


ふわりと、華やかに笑うお兄さん。
その不意打ちの素敵な笑顔に、私は思わず頬を赤らめた。


「俺は永倉新八、宜しくネ小百合」




熱い頬を両手で押さえながら彼を見たら、彼はまた笑って、そう、言った。

(新八さん。なら、呼び方は)


「こちらこそよろしくっ、新ちゃん!」








……よろしく、と笑いかけた。
すると新ちゃんも、呼び方に少々の戸惑いを見せながら笑った。

初めましてなのに、そんな事気にならないくらいに新ちゃんに惹かれた。
それはきっと、新ちゃんも言える。



──ぐらりと、景色が揺らぐ。



(…ん、んぅ? あ、夢だ、これ)


そう気付き、重い瞼を押し上げた。

目の前に広がるのは青い青い大空と、空を飛ぶ大きなからくり。


ああ、そうだ。
私は今違う世界に喚ばれていて、真選組で雑用頑張って、帰りに探険して。

それから、
それから…、

(かつらさん、に、あったんだ)


くらくらする頭を抱えて、私は寝かされていたその場所に座り直した。

見渡せば、側に桂さんの姿は無く、代わりに居たのは



「あ、気ィ付いた?」

「…んん…、んぅ?」


黒い眼鏡と生えそろわない無精髭、くすんだ赤の半纏を着たそのオジさんは、困ったように笑った。



To be continued.


出してほしいキャラアンケート一位の『永倉新八』さんでした。
やっぱり小百合は新ちゃんと一緒が一番しっくりきますね(笑)

アンケート一位なので、後々にも出したいと思ってます。ぜひご期待下さい。


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