誠なる真(に)

 

行ってきます、と留守番をする神楽ちゃんに手を振って外へ出れば、そこは雲の少ない青い空が広がっていた。

その空には、雲とは違う何かが浮かんでいる。


(自宅の前で転んだ時に見たのとおんなじだ……)

京都にはないそれが、何だかんだで気になって仕方がない。


「江戸っては随分と技術が進んでるんだねぇ、京都にはあんなの無いもん」


羽ばたかない鳥のようなそれらが大空を裂くように進むのを、目で追いながら私は笑った。
しかし新八ちゃんは私の言葉が信じられないようで、私の横顔をキョトンと見つめる。そして訊ねた。


「こっち程ではないにしろ、京都にも天人の技術は行ってる筈ですけど…」

「嘘だぁ、京都にはあんなの飛んでな……」

「…小百合さん?」


新八ちゃんの言葉に返事をするが、その間に何かに気付いて私は一点を見つめた。
急に黙り込んだ私を覗き込むように名を呼んだ新八ちゃんの向こう側、そこに居る不思議な姿のヒト。



黒い肌、黒い服

白い、髪

赤い、瞳…。

そして射抜くように鋭い眼光。


遠くから私を見つめるそれが恐くて、私はその場に立ち尽くした。


(馬鹿だ、視線を逸らせばそれで済むのに)


小百合さん、と呼ぶ声が、遠くに聞こえた。おかしいな。新八ちゃんは目の前に居るのに。
ぐにゃり、視界が滲む。


「…う…ッ…」

「小百合さん!?」


急に吐き気を感じて、私は口元をばっと押さえた。込み上げるモノを堪えながら、目の前の新八ちゃんに縋り付く。


「小百合さん、どうしたんですかっ?!」

「……し…ぱち、ちゃん……ッ」

「と、とりあえず、何処かで休みましょう!ね!」


半ば急かすような呼び掛けに頷く。
あたふたする新八ちゃんの声が、妙に安心感を与える気がした。

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