闇と光の裏と裏(に)



重い足を引きずるようにして万事屋に帰ると、お通ちゃんのライブがあるとか言っていた筈の新八が部屋の掃除をしていた。

「あ、おかえりなさい。 そうだ、ちょっと聞いてくださいよ銀さん!今日はお通ちゃんのゲリラライブだったんですけどね、まさかのガセネタだったんです!だから、急遽集まった親衛隊は全員無駄足で!酷くないですか!?」

「…へ〜」

「せっかく皆でお祭り行くっていうのを蹴ったのに、本当にくやし…って、あれ? 小百合さんは…?」


手に持っていたハタキを棚に戻しながら、リビングに入ってくる俺達を見る新八。永倉の隣が定位置であるあの少女が居ない事を不思議に思ったのか、新八は首を傾げて訊ねた。
神楽がその言葉に肩を震わせる。


「どっか、行っちゃったヨ」

「…え?」

「私がお祭りに行こうって言ったから…拐われちゃったネ。守るって思ってたのに、守って…あげられなかったアル」

「か、神楽ちゃん落ち着いて」

「落ち着いてるヨ、落ち着いてるけど…っ」


泣きそうな声をあげる神楽の頭を乱暴に撫でれば、いつもは苛立たせる事の多い少女は痛々しく顔を歪めた。
こいつが自分をそこまで追い込んで考えているとは思わなかった。

けれど、そんな事は言っていられないのだ。


「神楽、過ぎた事はしょうがねぇだろ。考えなくちゃいけないのは、これからどうするのかだ」

「…、小百合、助けるアル」

「それだけ決まってりゃ、上等だ。 いくらこっちに算段がなくたって、なんかしらアクション起こせば結果は着いてくる。諦めたらそこで、試合は終わっちまうだろ?」


慰めるようにそう言えば、神楽は小さく頷いた。新八の「どこの安西先生だよ」と呟いてツッコミをいれたが、そこは軽くスルーだ。

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