夏に降る雪の花
(に)
説明を促されたが、実際俺だって何かを掴んだ訳じゃない。
山崎は、『真選組では小百合を守れないから、匿ってほしい』と言った。
それがどういう事なのか、イマイチ理解が出来ずにいる。
「こっちの真選組は、小百合を匿えない状況にいる。 だから俺達で小百合を守るしかねぇ」
「高杉って奴らからアルか?」
「多分、そうだろうな。 いいかー小百合、極力出掛けないで、出掛ける場合は誰かと一緒じゃなきゃ駄目だからな!」
「んっと、わかった!」
本当にわかってるんだか甚だ疑問ではあるが、永倉や神楽と一緒なら大丈夫だろう。一人で買い物やなんかに出るとも考えにくい。
意気込んで拳を握る小百合に思わず頬を緩め、俺は新八の入れた茶を煽った。
「小百合っ、定春の散歩行くアル!」
「ってオイ神楽、人の話を聞いてたのか?!」
「聞いてたヨ。小百合は私が守るから大丈夫ネ! だから定春と三人で遊びに行くアルーっ」
「うん、行こうっ」
ぱぁっと笑った小百合は、神楽に手を引かれて部屋の外へと駆け出す。
ちょっと待て、と伸ばした手も虚しく、二人はコロコロと女特有の華々しい笑い声を上げながら万事屋を飛び出した。
「神楽ちゃん、歳が近い友達が出来て嬉しいんでしょうね」
「そうかもしれないけどよぉ…」
「神楽ちゃんと定春が一緒なら大丈夫ですよ。 永倉さんも心配しないで下さいね、ああ見えて、神楽ちゃんは強いですから」
「うん…、というか、一つ気にかかったんだけど…」
神楽と小百合を見送った体制で、永倉は呟いた。手には湯飲みを握ったまま、少し煽ってから俺と新八を交互に見つめる。
何事かと見返せば、永倉は湯飲みをテーブルにごとりと置いて顔をしかめた。
「小百合と神楽ちゃん、そんなに歳は近くないよネ?」
「え?」
「小百合、もうそろそろ二十歳だヨ。神楽ちゃんはそんな歳じゃないだろうしサ」
でショ、と倒した首を戻す永倉。
俺と新八は、そんな永倉の言葉にポカンとするしかない。
ハタチ?
もうそろそろ、二十歳?
という事は、
「小百合さんって僕より年上なんですか…!?」
新八が声を上げる。
見事に俺が言いたい事を代弁したそれに、俺は頷いた。
しかし今度は永倉がキョトンと目を丸くする。
一体何歳だと思ってたのサ、と唇を尖らせる不機嫌そうなその仕種に申し訳なくもなり、俺は頬を掻いた。
「小百合自身、幼く見られるのを気にしてるから言わないであげてヨ」
「はい、すみません…」
「や、新八君。別に謝らなくても良いから」
「幼く見えるってのはお前も変わんないと思うけどなぁ。お前こそ何歳だよ」
「坂田さん、俺に喧嘩売ってんだったら買うケド?」
「買ってみろやコノヤロー」
売り言葉に買い言葉で俺の事をジロリと睨む永倉の双眼に、俺は負けじとにじり寄った。
全くもう、と息を吐いた新八を横目に見ながら、俺と永倉はいがみ合う。
そんなケンカは、小百合達が夜の散歩から帰ってくるまで続いたのだった。
まる。
あれ、作文?
To be continued.
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