それは禍の如く
(に)
「大変ヨ銀ちゃん!」
「ワンワン!」
神楽と定春がそう言いながら万事屋に帰って来たのは、山崎が出ていって間もない頃だった。
何が大変なんだ。俺が訊ねるより早く、新八がどうしたの?と声を掛ける。
それに答えるべく、神楽は新八に身体を向けた。
「ホントに大変ヨ、小百合が迷子で居なくなっちゃったアル!」
「え? ああ…それなら、大事には到らないよ」
「何がネ。小百合が迷子ヨ? 新八は心配じゃないのかヨ、薄情者め!」
「いや、そうじゃなくてね……」
「何だよダメガネ! 自分が一番小百合と仲が良いからって調子乗ってんだろコノヤロー。私だって小百合とイチャこきたいヨ!」
「何でそうなるのかな?! もうちょっと僕の話を聞こうよ神楽ちゃん!」
物凄い剣幕でまくし立てる神楽。
困り切った新八は、後はお願いします、と俺に話を振った。
(コノヤロー…)
「あのよー神楽、小百合は『かくかくしかじかで真選組が預かります』ってよ。」
「マジでか!」
「神楽ちゃん何で銀さんの言葉はちゃんと聞くのさ」
「うるさいダメガネ」
ひどっ!と、泣き言を喚く新八をよそ目に、神楽はソファーに勢いよく腰を下ろした。
その傍らに、定春が伏せる。
(……ん?)
定春の背中。
そこに、何かが乗っていた。
いや、誰かが乗せられているというのが、正しい表現かもしれない。
まるで物干し竿に掛けられた洗濯物のように、一人の小柄な男が定春の上に居る。
「神楽、何だそれ」
「んん?」
指差してそう言えば、神楽はそれの存在を今の今まで忘れていたようで、あっ!と声を上げた。
新八と俺は、定春の背に乗せられたその人物を食い入る様に見、神楽の言葉に耳を傾ける。
「祭の会場で拾ったの、忘れてたヨ。 何かの手掛かりになると思ったから、持って帰ってきたアル」
「手掛かり?」
新八とハモりながら訊ねる。首を傾げて神楽を見ると、神楽は定春がね、と続けた。
「定春が、この人から小百合の匂いがするって。ねー、定春ー」
その言葉に、定春がワンと鳴く。
どうやら、その通りだと言いたいようだ。
水色の羽織りを身に纏い、腰には体格に不釣り合いな大きめの刀が差してあるこの茶髪の男から小百合の匂いがすると、そういうのならば。
(こいつも、異世界の人間?)
気を失っているそいつに聞きたい事は山ほどある。これからどうなるかなんて、考える暇もなかった。
To be continued.
早く永倉を出せ、と、お叱りをいただきました。その件は本当申し訳ございません。
私も永倉さんを出したくて出したくて仕方なかったので、やっと出す事が出来て満足です。
ここまで来れば、永倉新八と小百合が絡むまでは時間かかりませんから…!
次の話では無理かもしれませんが、それから先は、ラブラブさせる気満々です。
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