破滅への花束(に)



「御用改めである! 高杉、神妙にしろォォ!!!」



何処に隠れていたのか、トシちゃんを含む大量の真選組隊士が私の周りを囲んだ。
私を、じゃないのは解る。だって『高杉』さんを捕らえに来た口ぶりだったから。

(…と、いう事は…、お兄さんは大和屋さんじゃなくて…『高杉』さん?)


剣を抜いてそれをこちらに向けている隊士。私の側で笑いながら佇んでいたお兄さんは、そんな隊士達を一瞥して立ち上がった。
私の腰を抱いたままだったので、私もそんなお兄さんにつられて立ち上がる。



「オイ高杉。 そいつとどこで知り合ったかは知らねぇが、その女はテメェみたいな野郎が手を出して済む女じゃねえ。」


だからさっさと離しやがれ。ドスの効いた声でトシちゃんが言った。しかしお兄さんは私の腰から腕を外さない。

それどころか、より密着するように抱き寄せた。


「ククッ、随分と愛されてるみたいだなァ、円小百合」

「……やっ、やだ、離し…て…!」

「それは聞けねぇな…帰る方法は知りたくねえのか?」

「知りたい、けど…ッ、」


向き合うように抱きしめてくるお兄さんの胸を押す。
けれど男の人の力に敵う筈もなく、私は腕の中に納まっているしかなかった。
そんな私達を見る真選組の面々の表情は、酷く固い。

隊士は皆、私が居る所為でこっちに攻撃を仕掛けられないのだろう。
私は、言わば人質だ。


(どうしよう、どうしよう…!)

ぐるぐると、それだけが頭の中を支配する。

私は泣きそうになりながらもトシちゃんや総ちゃんに目を向け、そして私の身体の自由を奪っているお兄さんを見上げた。

するとお兄さんも私を見て、必然的にカチリと視線が交わる。


「くく、泣きそうな顔もそそられるなぁ…?」


「……!」


お兄さんの低く響く言葉に、私は身を強張らせた。真選組の面々にも妙な緊張が走ったのがわかる。

私は益々涙目になって、顔を横に振った。


(助けて、助けて新ちゃん…!)

届く筈のない祈りを、ひたすら心中で繰り返す。当然、新ちゃんの助けがくる訳はなくて、私はお兄さんの細い指で顎を支えられた。
無理矢理に上を向かされ、固定される。そして考える間もなく、深く口付けされた。


「…っん、は…っ!」


口の端から漏れる吐息。
真選組隊士達の、どよめき立つ声が耳に届いた。

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