ああイワちゃん大好きよ。おっきなお顔にかったいお肌。おっきなお口にフルパワー…ううん、フルカマーなまつげ。ハイテンションな容姿も口上も、誰もが注目せざるをえないほど。なんてパワフルなのかしら。ううん、カマフルなのかしら!ああイワちゃん、大好き大好き。
 そんな言葉を飽きもせず、毎日毎時間毎分毎秒、あなたにたっぷり捧げるの。大好き、なんて一言ではこの溢れる想いは伝えられないもの。でも、大好き、って言うけどね。だって一番私の気持ちにぴったりなんだもの!


「ん〜。****、ヴァナータがヴァターシを愛すのは誰にも禁じられてはいないけど、叶わないことって、あっチャブルのよ」

「どうして?イワちゃんは男の子だけどオカマだし、女の子にもなれちゃうし、やっぱり男の子が好きってことなの?」

「んん〜。ノンノンノン。そーゆーことじゃあナッシブル!」


 短い手足をクロスさせて、思いっきりバツを作られる。ああん。そのポーズもとってもキュート。そのガラ空きになる腹筋に、ロケットよろしく思いっきり飛び込みたい。でも私はイワちゃんに抱きつくことなんてできた試しが無い。いつも凄まじいウィンクに吹き飛ばされちゃうからね。いったい何度吹っ飛ばされたかしら?解ってるのに飛びこんじゃう私を、情熱的と形容してくれたイワちゃんったら、ああ、もう、大好き。


「イワちゃんが男の子を好きなら、私は男の子になる覚悟もあるわ」

「んんん〜。****は女であることを楽しんでナッシブルの?」

「ううん、楽しいよ。あっちこっち柔らかいから、つまむのが楽しいのよ。ほら、ほら、ね?」


 イワちゃんもつまんでみる?って、自分の二の腕をぷにぷにして見せる。いつものイワちゃんならノーセンキューって断りそうなものだけど、珍しく「どれどれ」ってつまんでくれた。
 イワちゃんが、つまんで、くれた!!
 あんまり嬉しいサプライズで、「はう!!」って変な声を出して、私はあったかい水を目から垂らした。イワちゃんも「んあ?!」って変な声。「なに突然泣っキャブルのよ?!」心配までされちゃった!あああ申し訳ないけど心配されて嬉しい。嬉しい嬉しい。大好き!


「いっ、イワちゃん゛の、おつまみが、あ、あんまり嬉じくで…」

「おつまみってヴァナタね……可愛いこと言っちゃって」


 あのかっこいい手袋で涙と鼻水をゴシゴシ拭きとられて、逆の手でクイッと上向かされる。「そんなこと言われちゃもうちょっと可愛がってあげたくなっチャブルのが、抗いがたい人の性ね」と、おでこにチュッとキスしてくれた。おでこって言ってもイワちゃんのお口はおっきいから、顔の上半分全部にむちゅっと唇がくっついたみたい。また変な声を上げて大号泣しちゃうのは仕方ない。あああああ大好きが過ぎて心臓が全毛穴から染み出しそう。おんおん泣きながら「このまま死んでもいい」って言ったら「ナンセンス!」と叫ばれた。


「喜びは生きる糧!糧であってゴールではナッシブル!おわかり****?」

「わだじ、バっきゃヴるだから、わっかんない…!はぶううう」


 イワちゃんは愉快そうに笑って「死んだりしないで、嬉しい楽しいを拾い続けなさいってこっタブル!」と豪快に抱きしめてくれた。やっぱりよく解らないのだけど、じゃあ死なない!
 そのまんま抱きあげられて、ぐるぐる振り回される。視界いっぱい華やかなイワちゃんのお顔。これって超高速メリーゴーランド?まるでイワちゃんと遊園地デートしてるみたいで素敵!ぽーんと勢いのついたまま上空に放り投げられて、言葉通り天にも昇る気持ちになる。あ、でもコレ、着地どうしよう。足から落ちて命は助かったとしても、骨折は免れなさそうだけどコレ。頂点に達して落下が始まると、よぎった不安はイワちゃんがおっきくした頭のモッフモフした髪にキャッチされて包み込まれた。「これが男だったらヴァナータ、地面に突き刺さったってノー眼中!よ!」だって。こんな抱擁感を味わえるなら私、女の子で良かったみたい。
 ああイワちゃん。優しくって厳しくって、色んな意味でおっきなイワちゃん。イワちゃんイワちゃん!
 ああもう、だあいすき!

(2010年12月1日)


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