Rush×Rush

05



「…っ、ぅ…ッ」

 悲鳴を上げることも出来ない。恥ずかしいとか、情けないとかよりも、こんな行為を受けているということが、恐い。
 笹岡は初めて今まで被害にあっていた女性達の気持ちが判った。

 もう二度としない。

――だか、ら…っ!

 だから、やめてくれと夢中で祈るのだが、痴漢は当然ながら神の化身などではないらしく、ずるりとスラックスを脱がせにかかった。
 笹岡は思わず脚を肩幅に開いて、それ以上スラックスがずり落ちないようにした。
 だが下着は露出してしまっている。人々の視線からだとジャケットの裾で、なんとか見えない程度だろう。

 身を屈めてスラックスを上げようとしても、すぐ後ろにいる痴漢に尻が当たる恰好になる。押し付けると言ってもいい。
 それは、さすがに、嫌だった。恐かった。
 そんなことをしたら、その尻に何をされるか判らない。

 腰を逃がそうにも、すぐ前は壁。左右はひとの背。
 どうしようもない。
 ひとに気付かれない程度に、しかし必死に首を振ってみても、何も変わらない。

 今度は下着の薄い布1枚の上から、性器と睾丸を揉みしだかれる。気持ち悪いんだか気持ちいいんだか、全く判らない。笹岡はただ混乱する。

「いいですよ…そう、大人しくして下さい」

 痴漢は笹岡が聞き取れるぎりぎりの声量で言って、下着越しに硬いものを尻の谷間に押し付けてきた。

「っ?!」

 その熱さ。判らないが、直ではないのか。
 つまり――痴漢は既に性器を露出していて、ファック、する気なのではないか。

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