Rush×Rush

03


 硬くなんてなるはずのない性器を執拗に扱きながら、相手は笹岡の鞄を持つ手を掴み、その甲を相手の股間に導いた。

「ッ!!」

 咄嗟に腕を引く。肘が後ろにいた男にぶつかってしまったが、男は気にする様子もなかった。

「私は」
「ッ?!」

 背後の男を窺っている間に、痴漢は更に迫って来ていた。車輪の音で消えそうなほどの声で囁くのは、スーツ姿の、笹岡より頭ひとつ分ほどしか身長のない小男だった。

「柔らかいのが好きなんだ。肉も、ココも」

 扱くようだった股間の手が、睾丸も性器もいっしょくたに揉みしだくような動きに変わる。

「――ッ!」

 悲鳴を上げたいが、懸命にこらえる。
 笹岡はなんとか女から無理矢理手を退いて、痴漢を引き剥がそうと二の腕を掴んだ。

 ところが電車が揺れて、ふらついた隙に痴漢は更に笹岡に抱きついてきて、性器と尻を同時に揉み始める。周囲の密度も詰まってしまい、距離が取れない。

「すいません」

 痴漢は白々しくそう言いつつ、笹岡の下半身を弄ぶ。
 腿がぶるぶる震える。対処が出来ない。せめてと痴漢の腕を掴んでみるが、力が強くて何の抑止力にもならない。

「ゃ、…め…っ」

 小さく呻いても痴漢は興奮するだけらしく、吐息が荒くなり、手が速くなって、笹岡は泣きたくなる。
 電車が停止する。降りる人間は少なく、笹岡は更に車両の奥、壁際に追いやられて、


 痴漢の手が離れた。



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