Rush×Rush

01


 ターゲットは膝丈スカートの女。
 化粧は派手過ぎず、でもマナーとしてちゃんとしているのがいい。髪は伸ばしていて、明る過ぎない色が好ましい。

 そんな持論通りの女を駅で見つけて、笹岡はラッシュの電車内で押されるふりをして女に近付いた。

 痴漢は犯罪だ。バレないようにするのが最良で、バレても騒がれないターゲットにするのが次善策だ。
 かと言って、パニックや恐怖で泣きそうな顔をする女に興奮するような性癖はない。むしろ萎える。
 ただ対処に困ってうろたえるくらいの表情がいい。

――さて、当りか外れか…。

 笹岡は手始めに、電車の揺れに合わせて手の甲を腿辺りに掠めてみた。
 ラッシュに慣れているのだろう、女は反応しない。まぁこの段階で反応したらよほどのナルシストか被害妄想家だ。そんな奴はラッシュ帯に乗るべきではない。
 笹岡自身とて揺れるたびにぎゅうぎゅう押されているのだから。

 次に腰の上辺りに触れてみる。女はやや眉を寄せるが、振り返りはしない。

――お、当りかも。

 嬉しくなるが、焦りはしない。撫でたりはせず、ただ手を当てておいて、『不可抗力だ』と思わせる。
 笹岡の後ろでも誰かの手が笹岡の尻の下に当たっているが、これは相手にとって災難であるとしか言えない。

――男のケツ触るなんて、悪夢だよなぁ…。

 もしそんなことになったら、笹岡は勤務中ずっとナーバスになる自信がある。

 それはともかくとして、次のステップに移る。揺れに合わせて、少しずつ丸い尻へと手を這わせる。

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