FANATIC LOVE

05


 取り繕いの台詞を嘯きながら包装を破り、ゼリー状の液体を纏った棒を取り出した。緩やかな節がいくつもあり、持ち手の輪がついている。

『えっちな赤谷くんのおちんちん、栓しないとね…』
『せ、栓、ですか…?』

 聞いてはみたものの、性器を握られた途端、一気にその言葉の意味と棒の用途が分かった。

「ひっ…、」
「きゃあああッ! 葉くぅうん!!」
「ちょっこら、離れなさい…!」

 喉が引き攣った時、ちょうど白池の2人目のプラチナチケット当選者が個室に入ったのだろう。
 赤谷のパーティションの傍からも、ふたつの足音が駆けて行く。


「素敵だ。赤谷くん。静かにね」
「んぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛…!」

 ぬぷ…く、ぷ…っ


 何度目かのキスで口を塞ぎ、ひと節、またひと節と赤谷の性器に棒が挿し込まれていく。
 ゼリーの所為であまり痛みはないが、強烈な違和感と敏感な粘膜を擦られる未知の体験に、涙がぼろぼろと溢れた。

(こわ、壊れ、ちゃ…っ)

 じっくりと尿道を圧迫し、拡げられる感覚。挿れられた場所からじんじんと熱く痺れて、おかしくなる。

 やめてくれと伝えようにも、ねちゃねちゃと舌が嬲られ続けていて言葉にならない。
 気持ち悪いと確かに思うのに、舌を擦り合わされ掻き回されることが徐々に気持ち悦くなって来て、尿道の違和感が『なにか』に変わっていく気がする。

 どうやらシリコン製らしいその棒は、内側を傷付けることなく性器の半ばまで埋め込まれた。
 性器の先端には持ち手の輪だけがぶら下がっている。
 その状態で、

「っ?」

 ぐいと衣装が腰まで戻された。下着が衣装の中でくしゃくしゃになっているが、稲坂は構わずにハンカチで赤谷の涙を拭い、自らの手も拭ったところで、パーティションがノックされた。

「っ!」

 肩を震わせる赤谷のことなど構いもせず、パーティションの端からひょこりとスタッフが顔を覗かせる。

「すみません。他の参加者さんがちょっと興奮されてしまったみたいで。特に問題はありませんので」
「、わ、分かりました…」
「? 赤谷くん、」
「ぁ、だ、大丈夫です。ちょっと、面と向かっていっぱい褒めていただいてて…っ、恥ずかしくて、でも嬉しくて、暑くなっちゃいました…っ」

 思わず、嘘を吐いていた。

 躯を弄り回され、性器に得体の知れない棒まで突っ込まれているなんで、言えるはずもなかった。

「そうですか。あ、あと、えーと…10分ほどですから」
「えっ、そんなに経ちましたか!」
「ええまぁ、はい。それじゃ」

 大仰に驚いて見せる稲坂に、スタッフはそそくさと姿を消した。おそらく、赤谷のためにかなり巻いている。107枚分の時間を正確に測るつもりはないようだ。
 それには稲坂も気付いているようだった。

「さすがに、推しと会う時間は一瞬で過ぎてしまうね」
「ッそ…そう、ですね…っ…ん、ぅ」
「あと10分かぁ…」
「っ!」

 舌舐めずりでもしそうな声音に赤谷は身を強張らせた。10分。短いようで長い。

 次は。次はなにをされるのか。

 稲坂は当然のように再び赤谷の指をしゃぶり、いきなり衣装のパンツの後ろ側に手を挿し入れた。

「っ!?」
『脱がせると急に入って来られたとき、赤谷くんのかわいいおちんちんが他の人に見られるからね。このまま気持ち悦くなろうね』
『っぃ、要りません…っ』

 必死に訴えても稲坂の指は双丘の谷間をなぞり、汗をかいたそこをくすぐって、そして硬く窄まっている秘孔に触れた。

「っひゃ…ッ」


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