CLOSE 01 信じられなかった。 電車の中で、こんなことになるなんて。 「んっ…ぅ…っ」 ドア横の手すりにしがみつき、敦志は怪しまれない程度に、それでも必死に首を振る。 背後に覆い被さるようにして立つ男の手が服の上から、双丘を、股間を、胸を、撫で回してくる。 まごうことなき痴漢行為。 するするとワークパンツの腰から、Tシャツの裾から、男の手が肌に迫ってくる。 「ッ、やめて、下さい…っ」 男が男に痴漢されているなんて、バレたくない。男だけに聞こえるよう、最小限の声で囁いた。だが、すぐ後ろで男はくつくつと喉で笑う。 耳に熱い吐息を吹き込むようにして、囁き返される。 「大丈夫、すぐ気持ち良くなる」 「ッな、ワケっ…!」 世界の男が全てゲイだと思うなと言ってやりたかったが、胸を這い回る妙に熱い男の手が胸の粒を摘まみ、息が詰まった。 同時に、下着の中にまで手が忍び込み、陰嚢を指先でいたぶる。 「──ッ!」 ぎり、と指が白くなるほど手すりを握り締め、敦志は悲鳴を殺した。 この電車のこの時間、同じ授業を選択している人間も大勢乗っているはずだ。目立つわけにはいかない。 男の指先が、焦らすようにつぅっと裏スジをなぞり、亀頭に達する直前でまた陰嚢に戻る。 「ンっ…ん、ん…っ」 [*前] | [次#] 『雑多状況』目次へ / 品書へ |