淫妖奇譚 肆

13




 ぐ、ぽっ! ずちゅんっ!
 どくどくどくどくどくどくッッ

「ぁっあー…っ、ぁぁ…っ、あ、ぁあ…っ」


 人間の体温からすると冷たい精液が、かつてない量で噴射されたのが河童自身も分かった。

 双葉はとろんと放心した表情でその感触に震え、それでもキュウキュウと肉壁も菊座も健気に締め付けてくるが故に、放射の勢いが収まっても、河童のまらはまだどくっ…どくっ…と精を放ち続けた。


「はぁ…おそらく、この子の親御さんはこの子が『芳華』であることを知ってたんだろうね」
「…なぜ分かる」


 まらをナカに埋め込んだまま呼吸を整える河童に、どこか酩酊でもしているような据わった目付きの犬神が問う。


「名前だよ。『双葉』。普通に子の幸福を願って才が芽吹いて欲しい。だけど育ちを止めて花は咲かせないで欲しい。そんな祈りを感じる名だ」

「ひぁ、ぁ、あぁん…っ」

 ぬ゛るッ…ずるずるずる、ぬるん。


 長いまらを全て引き抜くと、とろりと溢れ出たのは犬神の精だ。奥の奥まで注いでいる分、河童の精が流れ出てくるのは相当後になる。


 ひく、ひく、と双葉は完全にぼんやりと目を開きながらも意識はどこかへやっており、あまりにも無防備だ。

 そうなると分かっていたのに、危険だと知っていたのに、…加減などできなかった。


「君、犬神。魂に棲まう君が本気で守護しない限り、壊されるまで犯されるよ、彼」


 大抵は繰り返し循環し快楽を得ることを求めて犯し尽くされるだろうが、知能の低い妖ならひと時の強化を求めて血肉ごと物理的に喰って終わる可能性もある。


「とりあえず双葉の気が戻るまで、君は『待て』だ」


 グルル…と不服げな喉音が聞こえるが、原因はこの狗にあるのだからそれぐらいは当然だ。


「…花が咲いてしまったからね。またなにかあれば呼ぶといい」


 まだまだ彼を貪り尽くしたい欲望を抑え込み、川の神はその香りから少しでも離れるべく、庵を出た。
 今なら全ての川を氾濫させられる気さえした。



end.

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