A&D

01


 近頃の人間は悪魔を信じちゃいない。
 悪魔を呼び出す奴なんざ稀で、契約しても魂をくれる奴なんざもっと稀だ。

 ウーノは膝を抱えて、息を吐いた。

 ひとの魂か精気、天使の魂か血。それが悪魔の食事だ。
 だがウーノは天使には近寄りたくない。断固。絶対。

「うー…天使に挑むくらいなら、悪魔祓師のいるトコに行くしか…」

 くしゃくしゃと癖のない漆黒の髪を掻き乱し、ウーノは迷う。

 悪魔祓師――エクソシスト――がいるような場所なら、まだ悪魔を求める人間もいる。ただ、当然リスクも増える。


「お困りですか?」


 ばさり。

 羽ばたく音と、涼やかな声に、ウーノは青褪めた。

 最悪だ。
 最悪だ。
 最悪だ!

「ッ!」

 逃げようと身を翻すが、座っていたのだからうまく行くはずもなく。
 簡単に腕を捕らえられ、ジュウ、と焼け付く痛みに絶叫した。

「がッ――!!」
「あぁ。すみません、翼を隠されていたから気付きませんでした。あなた、悪魔だったんですね」

 白々しく微笑み、天使は言った。

「エディルと申します」

 『力』を弱めたらしく、掴まれた腕にさっきのような痛みはないが、じんじんと痺れるような感覚が残っている。

 ウーノは金髪碧眼で白い翼を持つ、見事なまでの天使・エディルを睨んだ。

「放せよ…っ。あんたの言うように、俺は悪魔だ。天使に助けは乞わねぇよ」

 力量の差が測れないウーノではない。エディルから魂は盗れない。

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