鳴かぬ蛍が、 01 目を覚ますと、白い天井があった。 「気が付いたかい」 その声に惟人は首を巡らせ、ベッドサイドに教授の姿を見付けた。ゆっくり起き上がる。 「教授…」 「覚えているかい、倉田くん。君は『彼』に散々犯されて、気を失ったんだ。ほぼ丸1日眠っていたよ」 「──っ!」 フラッシュバックする悪夢。思い出した途端に、下半身の至るところがじくじくと疼き出す気がした。 色々言いたいのに、何も言えない。 そんな惟人に教授は苦笑して、テーブルにあった粥を差し出した。 「話は色々あるが、まず食べなさい。点滴をしていたとは言えど、丸1日何も口にしていないんだ」 惟人は教授から渋々皿を受け取り、中身を口に運んだ。少し冷えかけていた。 「倉田くんには感謝しているんだよ」 しばらくしてから、唐突に教授が言った。 黙って惟人は粥を食べ続ける。 「それから、謝らなくては。すまなかった、あんなことに、なるなんて…」 「…」 「でも、君には『彼』の世話を続けて欲しいんだ」 「ッ! 冗談じゃない!」 カッと頭に血が昇った。 犯されたのだ。 あんな化け物に、あんな、大勢の、前で。 [*前] | [次#] 『幻想世界』目次へ / 品書へ |