もう耐えられません

02



「ッ、!」

 胸板を撫でた指先が離れたかと思うと、突然乳首を抓まれてビクッと躯が跳ねた。
 誰かが、小さく笑う気配がした。
 かあ、と耳が赤くなるのが分かる。違う、感じたんじゃないのに。ただ驚いただけなのに。

 女にするみたいに、両方の乳首が親指と人差し指で扱かれる。「っ、っ、」どうしたらいいか分からなくて腰が震える。

 強制的に与えられる刺激に勃ち切った乳首を、今度はちょんちょんと指先で突かれた。そこが硬く尖ったのだと俺に教えるみたいな仕草に、更に顔が熱くなった。

「ゃめ、ろ…っ」
 震える声で伝えて、首を振る。

 相手は全く意に介さない。

 硬い乳首をつついて、指先で転がして、抓んで。次第に乳輪辺りからムニュムニュと扱き上げて、悔しいことに調教され切った俺の躯は誰かも分からない相手だというのに、浅ましく快感を貪り始める。

「んッ…ん…」

 嫌なのに。
 後藤の触り方とは、違うのに。

「いゃ、だ…っ」

 犯されるのか? このまま?

 そう思った途端、ざっと全身の血の気が引いた。ついさっきまで確かに殺される恐怖が確かに勝っていたのに、それが現実味を帯びた途端に嫌悪が塗り替えた。


 嫌だ。
 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。

 と。


 ちろっ、

「ふぁっ!?」


 むにぃ、と扱き伸ばされた乳首のてっぺんを、濡れたものが撫でた。舌、だろう。


「ぁ、やだ、やだ! やめろ、やめろぉ…!」


 ぎちぎちと腕の拘束を引っ張り足掻くが、状況は変わらない。誰かは俺の乳首を捏ねながら、勃ったそこを舐め回し、吸い上げる。
 後藤とは違う。後藤ならもっとねっとり執拗に舐める。

「っん!」

 れろれろッと舐め弾かれながら、無防備だった股間に触れられて更なる羞恥が足先から脳天まで突き抜けた。

(…勃、って、る…)

 嫌なのに。怖いのに。後藤じゃないのに。拘束されて、自由にもならないのに。

 また教えるみたいにちょんちょんと指先でつつかれたそこは、完勃ちではないものの、腹から浮いていた。
 くすとまた相手は笑って、ちょんちょんと俺の性器を突いては揺れるそれを見てきっと嘲っているのだろう。体温が上がる。

 くりゅう…と指で睾丸の形をなぞられる。

「ッ、ふ…っ」

 あまり経験のない触れ方に腰が揺れた。

「ほ、本当に、誰だよ…なんでこんなこと…」

 目の見えない恐怖と、正体不明の相手だろうがはしたなく反応する情けなさに打ちのめされながら、俺は改めて聞いた。
 すると初めて、顔の傍に気配が近付いた。



「ちょっと用事で来たら、面白そうな玩具があったから弄ってみた。それだけだよ。──青木先生」

「!?」



 低い声は穏やかで、でも俺はそれどころではない。ここは後藤の家だ。用事があるというなら後藤にだろう。

 なのに、何故俺の名前を? 職種を?

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