イラスト

オマケSS




***

「ジロジロ見てんなよ気色悪ィな」

 あまりに注視し過ぎただろうか。渉がシャツを脱ぐ手を止める。
 体育授業前の、男子高校生の着替え。普通なら、あまりまじまじと見るようなものではないのかもしれない。
 けれどきっと、渉は『普通ではない』場合のことも、判っている。

 だって、警戒した頬が、ほんのり赤い。
 だって、脱ぎかけたシャツの隙間から、首筋に、胸元に、ちらり、赤い鬱血痕が覗く。

 こちらの視線に気付いたのだろう、はた、と自分の手元に視線を落とした渉が、さっと更に顔を赤らめて、シャツを掻き寄せた。こちらの邪な思いにも、気付かれた、だろうか。
 じり、と一歩距離を詰めれば、渉は引きつった笑みを口許に貼り付けて、一歩、引き下がる。

「お、オイオイ、これはアレだ、俺の彼女独占欲強くて、ッ」

 あからさまな嘘を並べ立てる渉のシャツを掴んでぐいと開けば、白い肌のあちこちに散ったキスマーク。

 独占欲強過ぎんだろそのカノジョ。
 ……たぶん俺も、その『ひとり』になるんだろうけれど。

「お──」
「静かに」

 皆が居なくなった更衣室。口を掌で塞いで喚き声を殺して、俺は白い喉に、噛み付くように吸い付いた。

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