in 【化学室】

日向 進の場合 1


※(異物挿入/睾丸攻め)

 凹んだピンポン球を掌に乗せて、進は1段1段、階段を下りる。

 今日は部活――卓球部の活動はない。
 だから昼休みの自主練で潰してしまったピン球を、家に持って帰って膨ませるのだ。やり方は――あのひとが教えてくれた。

 進は彼・真尋のことを考えるだけで緩みそうになる頬をなんとか抑えながら、ふと真尋はどうしているのか気になって、化学室へと足を向けた。

 別に、声を掛けるつもりなんてなかった。
 ひと目、彼の姿を見るだけで良かった。

 けれど。

「んぅ…、ん、ん…っ」

 進は目を見張る。なぜなら彼の想いびとは、素肌に白衣を羽織り、ズボンの股間の膨らみを押さえつけながら腰をくねらせ、顔を紅潮させながらかすかにいやらしい声を漏らしていたからだ。

「く、黒川、先生…?」

 茫然と呟く。色っぽい彼の姿に、進の日常が吹き飛ぶ。
 これは、夢なんじゃないだろうか。真尋が学校で、あんな表情をするはずがない。あんないやらしい格好をしているはずがない。

 夢、なら。
 ずっとずっと、片思いしていた顧問の先生と、いけないことをしても、許されるだろうか。

 高鳴る鼓動を押さえつけ、進はふらふらと硬いドアを開けた。
 当然、真尋が振り向く。

「っ、ひ、なた…っ」

 進はぎゅ、と手にしたピンポン球を握り締める。潰れて尖った場所が皮膚を刺す。痛い。痛い? これは、夢なのに?
 現実味のないまま、進は長めの前髪の下の眼鏡を、震える指先で押し上げた。

「く、黒川先生。そ、その。実験指導、お願いできますか…?」

 ゆっくりした足取りで、なぜか動かない真尋に近付く。


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