過去のあなたと

04


 微かに情欲に狂った瞳で、つたない舌で、兄は言う。

「ぱ…、っパパ、の、…」

 羞恥に頬が染まるのが可愛い。父に見せてあげるべく、六花はくり、と遊糸の金茶色の髪をカメラへ向けた。

「ん? 『遊糸くん』のパパの『なんだ』と思って、『遊糸くん』は頑張ってパパのお仕事待つんだっけ?」
「ぉ…、…っ」

 はくはくと言葉が出て来ない兄を六花はただ撫でて待つ。既に『台詞』は伝えてある。
 ここでも──『六花』は必要ないのだから。


「…ぉち、…ぉちん、ちん…」

 消え入りそうな声で告げる姿は、普段の人に囲まれて明るく笑う姿からは想像ができない。


(あぁ…この動画、拡散したいなぁ…)

 なにせ六花は胸から上は写っていないのだから。この動画において、父にとって必要なのは『父に会えない淋しさを「見知らぬ男のペ○ス」で慰めるいやらしい遊糸』なのだ。
 それが腹違いの弟のモノである必要など、全くない。

「んん? 聞こえないなぁ。もっと大きな声で言わないとパパにも聞こえないよ? コレは『遊糸くん』にとって、なぁに?」

 正直、六花は多種の媚薬の類を試された経歴があるが故に、多少の催淫効果では効かない。
 それでも、筋が立つほどにガチガチに勃起した肉棒をまたわざとカメラに写るようにぶるんぶるんと振るって見せた。


 父の手が届かないところで、兄に性的教育を施す。
 歪んでいる。自分でもそう理解しているが、それが堪らなく昂奮するのだ。
 『父の遊糸』を自分好みに調教できる事実に。


(僕もあの変態の息子だってことだ…)


「…ぱ、…っパパの、おちんちん…」

「そうだね。じゃあ『遊糸くん』は『パパ』のおちんちんにちゃんとちゅうちゅうできるかな?」
「ッ…」


 ふるる、と青い顔で一瞬首を振り掛けたことすら愛しい。そうだね。兄さんは勃起した男性器なんてしゃぶることもなく生きてきたんだよね。

 でも、その人生はもう、ない。


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