榻の端書き | ナノ


(角都とデイダラ)


物好きな男もいるものだ、とデイダラは思った。
角都は金のために有名な忍の死体を重宝するわけだが、見ていてやはり良いものではない。
――女の忍は、死体のほうが綺麗だ、と角都は言う。そして好みであればセックスまでしてしまうそうだ。
デイダラは楽しげに話す角都の顔を、苦虫を噛み潰したような表情で見ていた記憶がある。
そして今、角都に犯されようとしている彼は、抵抗心などまるでなかった。ただ、ひとつの疑問が浮かんだのだ。
自分は、女でも死体でもない。
だがデイダラは黙って、服を脱がされていた。
「……寒いか?」
「…うん、でも、平気」
問い掛けてきた角都のその言葉は、気遣いであったが、デイダラにはそうは感じられなかった。
後にかけられる言葉を知っていたのだ。
「じきに熱くなる」
角都の烏色のマスクが、あからさまに吊り上がった。

「ん゙んっ、ん」
ふしくれだった太い指指が、デイダラの腸内でばらばらに蠢く。
指が腸壁をかすめる度、腰が跳ね上がり、角都の快然を煽ったが、彼は決してそこを執拗に攻めることはしなかった。
もどかしさが脊髄からぞくぞくと伝ってくる。
だが、デイダラは口をつぐんでただ耐えていた。
「気持ちよくないのか?」
わざらしく訊いてくる。角都はデイダラがプライド高いことを知っているので、答えが返ってこないことはわかりきっていた。
訊かずにはいられないのは、羞恥心を味わわせるためだ。
その問いに、デイダラは決まって顔を赤らめる。
(ああ、わざとらしい)
彼はほぞをかんでから、意地の悪い角都と、反応してしまう自分を憎らしく思った。
指の動きがいっそう激しくなると、デイダラの喘ぎ声もいっそう大きくなり、口を魚のようにぱくぱくと開閉する。どっと快感が押し寄せてきた。
「あっ、あっああ、うぁ」
「イけよ」
ぐぐ、と腸壁を押した。
「カ、ッ」
ビクン
デイダラの身体が、面白いくらい思いきり跳ねると、そのあとすぐに射精を催した。白の液が、彼の腹にかかる。
「ほら、ぼうっとすんな、ボケ」
休む間もなく、腸内に角都のペニスが入り込んでくる。
「っ、ぐ、ぅああ!あーっ」
射精後すぐということもあってか、デイダラはされるがまま、もはや俎上の魚だった。
身体はまるで、快感と一体化したかように痙攣を繰り返す。
そして、完全に挿し込まれた頃には、デイダラは勢いのない二度目の射精をしていた。
「、」
(あ――またこのかんかくだ。からだが)
視界はだんだんとぼやけていき、やがて閉ざされる。
デイダラはそこで意識を手放した。
角都はペニスを引き抜くと、数回扱いて、射精させた。
「ったく、まあ、仕方ないか」
ぼやきながらも、デイダラの身体を濡れタオルで綺麗に拭き、衣服を身に付けてあげる。
そして、薄地の掛け布を首から被せてやり、部屋を後にした。
(………)
そんな様子を、先程気がついたデイダラが、見つめていた。


榻の端書き


オイラ、鈍感だけど、あの時わかってしまったんだ。
角都、アンタの背中はとても寂しそうだった。
女じゃないのに好みだと言ってくれる、死体じゃないのにセックスをする、気を失ったら途中でやめてくれる、身体にキスや傷の痕を残さないでくれる、最後には必ず身体を拭いて服も着せてくれる。
ぜんぶ、ぜんぶ、オイラのためだろう?あの行為は…旦那にバレないようにしてくれてるんだろ?
(オイラが、好きなんだ?……)





2011/12/22 一歩遅い恋心


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